西浦

□愛情表現
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「知りたい?」

「別に...。」


フーンと田島は少し残念そうな顔。
えっと、教えたいなら勝手に言えばいいと思う。


「ま、いーや。俺のこと興味ねえみたいだし。」

「そう?」

「でも言う。」

「はあ!?」

なんなのコイツ、矛盾しすぎでしょ!?




「俺、苗字のことが好きなんだ。」


「・・・・・。」


 ...え?
ん?今なんつった?

「もう一度言ってくれる?」

「だから、俺はお前のことが好きだって。」


田島は打席に立っているときのような真剣な瞳で私を見た。
いや、それでもありえないでしょ。
だって、ねえ?


「苗字信じてくんねんだ?」

「え...え...えっと...」


「もういい...。」

そう言って田島は私の側から離れていった。だけど、私は追い掛けることが出来なかった。


それより...

田島が私を好き?本当に?冗談でしょ?第一、何女の子みたいに『もういい』とか言って去っていくわけ?
自分の顔がみるみる赤くなっていくのが分かる。


キーンコーンカーンコーン


「あ、予鈴...あぁ!!お弁当食べてないじゃん!」


私は仕方なく教室に入って、隣で伏せて眠る田島をチラッと見た。

(田島泣いてたりなんかしてない...よね?)


キーンコーンカーンコーン


気付けば授業は終わってた。田島はずっと伏せていた。

放課後になって...私は食べ終えていないお弁当を食べる。
友達からは、

「名前今からお昼〜?」

あはははと笑われてしまった。そりゃあね...。




すると...

「苗字ちょっといいか?」

と今度は泉君が。

え...何だ...?まだお昼食べ終えてないんですってば...。


「お昼、食べ終えてないのですが...」

ちなみに今は秋頃です。お弁当は無事です。

「ま、そのままでいいから聞いてくれる?」

と、泉君の話し方は優しかった。


教室には誰もいなくて2人きりで...
あれ?今放課後だよね?部活は?

「泉君、部活は?」

「あ?あぁ。ちょっと遅れるって言っておいた。三橋に。」

「ふ〜ん...?」

モグモグとお弁当を食べ続ける私。

「あのさ、田島のことなんだけど...」



ビクッ


「え?」

私は、箸を止めた。


「ちょっとさ、落ち込んでんだよ。アイツ、前から俺にお前のことで相談したりとかしてたから。苗字のことが本気で好きなんだけど、どうしたらいいか分からないって。」


え...?田島が...?あの田島が?


「でさ、アイツいっつもお前に抱きついたりとかしてんじゃん?あれってさ、苗字のことを振り向かせる一種の愛情表現なんだよ。アイツにとっての。」




ドキッ

(愛情表現...)


「まさか、アイツのことだからそんなストレートに苗字に告うと思わなかったから、昼飯食ってるときの状況が全く把握できてなかったんたけど...。お前ら2人になった後、田島が先に帰ってきたから、色々話聞いたんだけど...」


えぇーあんな短時間の間に...?話したの?


「で、まあ...苗字に本気にしてもらえないって落ち込んでたんだけどさ...何で本気にできないわけ?」



それは...


「だ、だって...あんな...愛情表現なんて、私はふざけてやられてるのかと思ってたんだもん。懐かれてるのかな?って。
他にも、女子の前で変な単語言ってたりとか...。」


それだけ?私は、気付かないフリをしていただけ?だって私、恋愛とかよく分かんないし...人を好きになんてなったこと...ない。

あれ?気付かないフリじゃなくて、私がただ鈍いだけ?あれ?恋って何?なんだっけ?だんだん頭が混乱してきた。私って恋なんかするようなキャラでしたっけ?私って田島のことどう思ってるの?

...ますますわけが分からなくなってきた。

「おい、苗字?」

「泉君って恋したことあるの?」

「は!?」

泉君は顔が赤くなった。

「な...え...えぇ〜!?///」
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