西浦

□恋愛対象外
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身長175p、体型は標準。スタイルがよいとみんなから言われるが、これは私のコンプレックスだ。



恋愛対象外





私は中学の時に、好きになった相手に告白して振られたことがある。
人からは割と人気があるから男女共に仲がよかった。
その中の男子でも特に仲がよかった相手を私は好きだった。

自分の気持ちが抑えきれず、ある日私はその人を呼び出し告白をした。


けれど....


「お前の気持ち、嬉しいよ。けど、俺達背丈一緒くらいじゃん?それに、男くらいデカいお前を彼女っていうのはちょっと、気が引ける。....だから、ゴメンな!!」


私が好きになったその人は、そうやって私のことを振った。
とてもショックだった。
私の身長が高いせいで振られた。
私が男子くらいの背丈だから。










「.......い.....おい!苗字!!」


バシッ


「んん?夢...?.....って!!痛いわ!!」

「痛いじゃねえよ!もうすぐお前の読む番だから起こしてやったんだろ?!」

「読む番?」


えぇと...?今は何の時間だったっけ?
確か....確か....?

「現代文20ページ5行目だよ。」

「ありがと。」

小声で教えてくれたのは、私の前の席の泉孝介。
ついでに私を叩き起こしたのもコイツだ。


「....あ.....泉、」

「ん?」

「現代文忘れた!貸〜し〜

ベシッ!!

「ギャー!!」


思いっきり泉に教科書で叩かれた。
いくら何でもこの強さは....
痛いって!!

「ハァーッ お前また忘れたのかよ。しょうがねえな。」

「い、泉さん...いくら何でも痛いです...。」


でも、そうやって叩いてきたりしててもちゃんと教科書貸してくれるし、優しいんだ。
思いっきり叩くのは止めてほしいけど。
....やっぱり、そんなに強く叩くってことは私のことを女子として見てないからかな?
泉にとって私はどういう存在なんだろうか。










授業が終わり、私は次の時間の宿題をやっているところだった。


「苗字。」

泉が私の方に体を向け、私を呼んだ。

「ん?何?」

「さっき思いっきり頭叩いたところ、痛くねえ?」

「あ、結構痛かったよ!今まで以上に。」

「あ、マジか。ちょっと力入っちゃったんだよなさっきは。」

「え〜...そりゃあ痛いはずだよ。」

私がそう言うと、泉はくしゃりと私の頭を撫でた。


トクンッ



「い...泉...?」

「悪い。平気か?」

「だだ、大丈夫だよ!!どうしたの泉?そんなに優しくなっちゃって!!」


すると泉はパッと私の頭から手を放した。
本音はもうちょっと撫でていてほしかった。

「何でもねえよ。ちょっと、気になっただけだよ。」


私の方を向いていた泉はプイッと前を向いてしまった。
どことなく、泉の耳が赤くなっている気がしたのは気のせいだろうか。


「〜〜〜.....///」


私は恥ずかしくなり、


「トイレ行ってこよ〜っと」

と言い、誤魔化した。

「漏らすなよ。」

と、前を向いている泉に言われ、

「漏らすかい!!」

と私は返した。





泉とは仲良く接しているつもりだ。
今のままでいいけれど、私には泉に対して恋愛感情があるのだ。
そのせいか少し、物足りない気持ちもある。

でも、泉にとって私は女子なのだろうか...?

いつか私が泉に告白したら、泉はどう思うのかな?
泉だったら受け入れてくれるかな?

そんなモヤモヤとした気持ちが頭の中を駆け巡る。

きっといつか、抑えきれなくなって破裂しちゃうんだろうな。








私は、特に行くつもりのなかったトイレを済ませ、教室に戻った。

でも、戻ったのは教室に入る一歩手前までだった。


「なあ、泉!!泉はやっぱ、大人しくて静かで自分よりも小さい子がいいよな?」

「ああ、そうだな。俺的には女の子って感じがするのがいいな。自分より身長がデカかったらショックだよな。」


ドクッ

妙に泉の声が聞き取れてしまった。
この話って女子の好みとか、そういう感じの話だよね?
だってそれ以外ないし。


やっぱり、泉もそうなのか。
自分よりも身長が高い女子は恋愛対象外か。


私は教室に向けていた足を廊下に向け、そのまま歩いた。

あんな話を聞いてしまった以上、教室に易々と入れるほど私の心は強いものではなかった。


私はそのまま図書室へと向かった。

授業が始まるチャイムと同時に図書室に入った。

「静かだなぁ〜...」


当たり前だけど。
誰一人としていない空間で落ち着こうと思っていたはずだったが逆に落ち着かず、椅子に座り身を伏せた。

ハァ〜ッ


「また、振られちゃうんだろうな。」

ポツリと口にした言葉。


中学の時に振られた理由も本当は納得していない。
好きでこんなに身長が高くなったわけじゃないのに...。

やっぱり、こんな私じゃダメなのかな?



ガチャッ


突然図書室のドアが開いた。
私はそのまま机に体を伏せ、寝ているフリをした。

一体...誰が入ってきたの?

図書室に入ってきた誰かは、何故か私の隣に座った。

見たいけど寝ているフリの途中だし、万が一クラスの学級委員とかが私を教室に連れ戻すとかだったら絶対にイヤだ。
泉とは席が前後なんだから。
まだ心の準備が整っていないんだから。


「...........。」


なんで?なんで私の隣にじっと座ったままなの?


「....苗字.....」


ドキッ


いきなり私の苗字を呼ばれた。
.....というか、この声って....


「つーか、いつまでコイツ寝てんだよ。連れ戻しに来たっつーのに、この!!」

間違いない、この声は....泉だよ。


急に泉の手が顔に触れたかと思えば、ギューッとほっぺをつねられた。

痛い!!ちょー痛い!!かなり痛い!!早く放せ〜〜!



「全然起きねえ。こんなにつねって起きないとか、苗字ぐらいだろ。」

余計なお世話じゃい。


「.........。」


あ、静かになった。











「苗字......好きだよ。」



私の耳元に静かに降りかかった言葉。
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