西浦
□雪の日の帰り道...
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今日は雪が降った。しんしんと降る雪はいつしか積もって周りは銀世界...。
もちろん野球グラウンドも...。
「チッ 何で雪降ってんだよ。」
「まあまあ阿部、たまには練習が筋トレって日も俺はアリだと思うよ?」
とかなんとか言って俺の機嫌を直そうとする水谷。
「それに...」
と、言葉をつなげた。
「今日は久々に苗字さんと帰れるんじゃない?ほら、筋トレってたいして時間使わないじゃん?たまには一緒に帰ってやれよ。」
苗字...それは俺の彼女の名前。フルネーム言っちゃえば苗字名前だ。
名前とは中学の時から付き合ってる。アイツは野球が好きで、小学校の頃には男子の中で野球やっていたらしい。中学ではソフトボール部だし。
でも何故か高校では写真部に入った。
...俺の野球しているところを写したいらしい。実際試合の日は必ず見にくるし、何枚か俺の写った写真を見せられたことがある。
けれど写真部はほぼ真面目にやっていないのでいつ帰ってもいいし、もはや...活動ホントにしてんのか?レベルの部活だ。
だから一緒に帰れるわけで。
因みに今は昼休み。早弁したから、購買で買ったパンを食っている最中。もう食い終わるし。最後の一口を口に放り込んで牛乳をがぶ飲みする。
「水谷、じゃあな。」
「は?ちょ...俺1人で食ってなきゃなんねーのかよぉ〜!?」
席を立ち、まだ食い終わっていない水谷を置いて、俺はある所へ向かう。
隣のクラス...1年6組...名前のクラス。
「名前!」
と、6組の扉前で呼ぶ俺。
すると名前の友達が
「名前、彼氏君が呼んでるよ。」
と、言ったように聞こえた。
「え?ホント!?」
と名前が...
こちらを見、パアッと俺に笑顔を向け、俺の元に駆け寄ってきた。
まだ食い終わっていない弁当を取り残して。
「どうしたの?隆也??」
むっちゃ笑顔で俺に聞くコイツ。はっきり言ってすっげぇ可愛いっつうことは、ずっと前から分かっていることで。一度もそんなん言ったことねえけど。
まあ、とりあえず本題に入ろう。
「今日俺達放課後筋トレなんだ。だから俺が筋トレ終わったら一緒に帰んねえ?」
と、俺がそう言うなり...更に明るい笑顔を向けて、
「うん!一緒に帰る!!じゃあ、私...校門の所で待ってるね!」
と言った。
「は?俺が写真部行くから。今日寒いし。」
「ん〜ん?今日はね、部活ないの!」
「はあ?」
先に言えよ...。と思ったが、俺と一緒に帰ってくれるようで、つうか...すげぇ喜びよう。
「じゃあ、教室で待ってろ。行くから。」
「うん!分かった!!」
そうして話しを終わらせ、俺は自分のクラスへと戻った。気付けば水谷は昼飯を食い終え、クラスメートと話していた。
なんだかんだ放課後で、筋トレを2時間やった後6組へと向かった。
(何か今日はちょっと長引いたな...。)
そんなことを思い、6組に着いたが...
あれ?いねえ...。名前...何処行った?まさか、先帰ったとか?いや、そんなことはねえ。アイツは何も言わずに勝手に帰るような奴じゃねえ。
とりあえず、電話するか...そう思った直後...
ピリリリ...ピリリリ... と携帯が鳴った。
着信相手を見ると、
「名前...?」
名前だった。
「もしもし、名前お前今何処に...」
『あ、隆也??校門だよぉ〜!』
「は?何でそんな場所にいんだよ!?教室行くっつったろ?!」
『う〜ん...ゴメン!!そんな事よりも、隆也に見せたい物があるの!!早く校門に来て!』
「ハァーッ 分かった。今行くから、待ってろよ。」
『うん!じゃあ、後でね〜』
「おう。」
プチッと携帯を切り、急いで名前の元へと向かう。
「チッ アイツ、こんな寒い中何校門で待ってんだよ!」
階段を駆け降り、猛ダッシュで向かった。
そして、着いたときに俺が見たものは...
「あ、隆也!!」
と、笑顔で俺を呼ぶ彼女と...
何だコレ。コイツ、何持ってんだ?
え〜と...何か見覚えあるな... あ、
「雪ネズミ?」
「何で?!」
俺がそう言うなり、素早く突っ込みを入れられた。
「え?だってコレ、どう見たってネズミだろ?」
「違うもん!雪ウサギだもん!!」
プクーッと頬を膨らませるコイツ。子供かよ。
「...で、見せたい物って...もしかして...」
「うん!コレ!!」
「ハアーッ まさかコレ作るために...?」
「うん!校門で待ってた。」
本当にアホだ。何だコイツは。三橋や田島よりバカなんじゃねえのか?と思うのは今日が初めてではないが...。
「名前。」
「ん??ひゃ...」
ギュッとコイツの冷え切った体を抱き締めた。本当に冷てぇ...。
「お前、いつからここに?」
「う〜んと...1時間前くらい...かな?」
「は?そんな前からかよ。どうりでこんな冷たいわけだよ。バーカ。」
「フフッ 隆也あったか〜い。」
「名前冷てぇ〜」