西浦

□好きだからすごく...
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カキーン カキーン

バッドの金属音が鳴り響く。今日は休日の部活だ。朝早く起きて、朝食をとって、身支度をして...毎日毎日ハードな予定なのだ。

今はバッティング練習。バッティングマシンから出てくるボールを打ちまくり、バッティングの腕を磨く。
10本ずつ打って交代なので、次の田島に代わった。

ちよっと休憩しよ。そう思い、ベンチに腰掛けてスポドリを飲む。
すると...

「泉!!」

と花井に呼ばれた。

「ん?何だ?」

「何か女の子が呼んでるっぽいけど...」

と言われた。


「女の子...?」


指差された方向へ向かうと、そこに居たのは...

「名前?」

俺の1つ年下の彼女の名前だった。

「あ、孝介先輩!!」

俺を見るなりパッと笑顔になった彼女。
可愛い...可愛いんだけど...


「泉!誰その子!彼女!?」

と水谷がデカい声を出して言った。

「え!?泉の彼女!?」

と、もっとデカい声で田島が言った。

そうして、俺と名前が居る場所にみんながやってきた。
練習中だった奴も練習をほっぽって。ももかんもどうやら気になったらしく...。


「えぇ〜!?メチャクチャ可愛いじゃん!彼女!!」

と、そう言われた。

「あ...あの...」

と、名前はオドオドしている...。

「てか、彼女居るなんか初めて知ったよ!!」

「俺も!!」

と、みんなが口をそろえて言う。



「名前、ちょい来て。」

「え...孝...」
 

グイッと彼女を引っ張って、人気のない場所へと連れて行った。

「孝介先輩....?」

「...んで、来たんだよ...。」

「...え...?」

「来んなって言ったよな?」

「う...ん...ごめんなさい...。」


本当は来てくれてすっげー嬉しい。でも...でもさ...


「悪いけど、もう俺に会いに学校までわざわざ来んな。」

「...どうして?」

「俺が来てほしくねえの。」

「分かった...。」


そう言って彼女は俺に背を向け、帰ろうとしたが...

「孝介先輩は...私と会っても、ちっとも嬉しくないんだね...。」

「え?」

「私、学校離れちゃってから全然孝介先輩と会えなくて寂しかった...。孝介先輩が忙しいこと知ってるから、我慢...してたけど出来なかった。会いたかったから来た...けど、ゴメンね...迷惑だったね...。」


震える声で口にする名前...。...迷惑?んなわけねえよ。本当は俺だって...


「すっげぇ...会いたかった...。」

彼女を後ろからそっと抱き締めた。この温もりが...恋しかった。彼女が俺の方に振り返ろうとしたところで、彼女の唇を奪った。
甘くて、柔らかい...。


唇が離れて、彼女の顔を見てみる。彼女の瞳からは大粒の涙がこぼれていた。
え...俺のキスやだった...?!


「え...ちょ...悪い名前!」

「や、ち...違くて...その...う...嬉しくてぇ〜!!」

ボロボロと涙をこぼす彼女がどうしてこんなに愛しいんだ?


「キスしたの久しぶ...


チュッと、また彼女の唇と俺のを重ねる。


「そんなにしてほしかったら、何度でもしてやるし。」

「う...///」


そう俺が言ったら、名前は真っ赤になって俯いた。
どした?と問おうとするなり...

「...会いたかった...」

そう小さく聞こえた。

あ〜もう...何でお前、そんなに可愛いの?だからだよ...。だから、来ないでほしかったんだ。ココに。
俺は、俯いている彼女の頬に両手を添え、優しく顔を上げさせ、俺と目線を合わせた。
泣いている名前...。不覚にもその涙をキレイだと思った。


「なあ名前、俺今からすげぇ恥ずいこと言うけど、黙って聞いててくれる?」

「うん...。」

「俺名前のことすげぇ好き。...だから来てほしくなかった...。」

「え...?」

どういう意味?と問いたそうな名前は我慢している。俺が黙って聞け。と言ったからだ。


「本当はすっげぇ嬉しくて、お前に会ったとき...すぐさま抱き締めたかった。でも、うちの部の奴ら好奇心旺盛で、お前のこと気に入っちゃったらどうしようって思って、情けねえけど、なんか不安で、お前可愛いから...。」

「そ...んなこと!」

カア〜っと顔を真っ赤に染める彼女。


「だから、会わせたくなかった。」

...何言ってんだ俺。いや、本当のことを言ったつもりだけど、なんて俺格好悪いんだ?



すると...

「孝介先輩...。」

「え?」

チュッと彼女は俺の頬にキスをした。
ドキッとした。


「私が好きなのは、いつだって孝介先輩...。だから、大丈夫。孝介先輩のことが大好きだから...だから...また会いに来てもいい?また孝介先輩の野球してるところが見たいの...。」


名前は俺の手を取り、キュッと握った。

「...ん。分かった。」

そう言い、俺達はグラウンドへと戻っていった。

「お、泉!戻ってきたな!?何してたんだよ?!」

と田島。

「何だっていいだろ。」

「で、紹介してよ泉!!」

とウゼェ水谷。


まあ、紹介するが...

「コイツ、俺と同じ中学で後輩の、苗字名前。彼女。」

「こ...こんにちは。」

と名前が挨拶。

「うおー!!やっぱカワイー!!」

とか言ってるよコイツら。



けど...

「私、西浦高校を受験しようと思うんです。孝介先輩といつも一緒に居たいから...。」

と、みんなの前で言ったコイツ。恥ずいこと言ってくれるな...と思ったが、




好きだからすごく...

(嬉しいんだよな...。)


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