西浦

□寂しがり屋な君
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「私、阿部君のことが好きです!!」

「俺も、苗字、お前のことが好きだ。」


この日からだいぶ経ったよね...。
でも私、今のほうがすごく辛い。だって、あなたへの想いがこの胸に収まりきらないぐらい大きくなっていく。
それはいいことなのかもしれない。
でも私は、そのことがすごく辛く感じる。だって、どうしたってあなたの1番に私はなることができないから...。


「阿部!!部活行こーぜ!!」

「おぉ。」


毎日毎日野球部は大変そうで、多分この学校で1番大変な部活だと思う。
私が初めてあなたと話したことも、野球のことだったよね。


「阿部君って野球部なんだよね?」

「ん?あぁ。そうだけど?」

「守備どこ?」

「キャッチャー」

「へえ〜キャッチャーかぁ〜すごいね!!投手にサイン送ったりするんでしょ?すごく頭使ったりするんだって聞いたことがあるんだ。カッコイイね!」

「...!お前、変わってんのな。捕手を褒めるとか。」

「ん?そうかな?だってすごいと思ったから。」


そう私が言った後の阿部君の顔がすごく優しい顔になって、それから私は阿部君のことが好きになった。
....今思えば一目惚れのようなものかもしれない。
そのとき席が前後になったんだっけ。
それで野球の話したり、色々話したよね。



今は放課後...

1人で私が教室にいてあなたのことを想ってる。



ポロッ

「...あ。」

何かと思ったら私の目から水滴が。

野球やってるあなたが好き。そんなことは自分でも承知。でも、やっぱり寂しいよ。なんでかな?あなたのことがすごく遠く感じちゃうよ。

私はあなたの1番にはなれない。
やっぱり...なれないかな?

それから随分時間が経った。


「あれ...もう6時になっちゃった。」

私はどのくらいの間、こうしていたのだろう。
思ってみれば最近、こういう風に時間が過ぎていくことが多くなっている。


(...何やってんだか...私。...帰ろう。)


そう思った瞬間...



ガラッ


「!!」

「...名前...?」



「あ...阿...部君...?」


なに?なんでここにいるの?部活は?聞きたいのに...言葉が出てこない。



すると...



ギュッ

(え?)

...どうやら抱き締められているらしい。


「忘れ物...取りに戻ってこようとしたら、明かりついてて、もしかしたら...と思って急いで来たんだよ。...やっぱり...お前だった。」


「...で?なん...で私だって...」

「お前1人で泣いてるんじゃないかと思って。お前が寂しがり屋なの、俺は知ってんだよ。」

「あ...阿部君...。」

「ゴメンな...寂しい思いさせてて。」

「ううん。野球の方が阿部君には大事なの分かってるから...大丈夫。」

「お前...それ本気で言ってんのか?」

「え...?」

「そりゃあ、俺は野球も大事だけど、お前がキャッチャーすごいって言ってくれるから、俺は野球こんなにも一生懸命出来るし...。」


...そうだったの...?全然知らなかった。
嬉しい...。

「フフッ」

私はつい笑ってしまった。

「...な...何だよ?」

「阿部君...大好き。」

「...思ったんだけどさ、『阿部君』ってヤメね?」

「え?じゃあ...何て...阿部?」

「...おい。」

「阿部べ?」

「おい!!」

「隆也君?」

「...もうちょっと...」

「...た...隆也?」


そう呼んだら不意打ちでキスされて、「よく出来ました。」とイジワルっぽく笑う隆也が何故かすごくカッコ良く見えてしまいました。



寂しがり屋な君


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