第2回 2008年12月

□あなたの為の歌/遠夜×千尋
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オレは神子に恋をしている…ようだ。

神子を見ると胸が“ぎゅっ”とする。

その事を兎に話したら、それは恋だと言われた。

オレにはよく分からない。
ただ、神子を見ていると、いとおしくて、抱きしめたくなる。

神子が他の人と話しているのを見ると、胸が苦しくなる。

オレだけを見て欲しくなる。

でも、それは望んではいけない事。

神子には、好きな人がいる。

だから、オレは…



「遠夜、どうかしたの?
ずっと俯いているけど。具合でも悪いの?」

神子の声が聞こえたから、顔を上げてみると、目の前に神子の顔があった。

いつの間にか、傍に来ていたらしい。

少しびっくりしつつも、神子の問いに答えた。

『いや、具合は悪くない。ちょっと考え事をしていただけだ。
神子、オレに何か用があるのか?』

「うん、そうなの。
カリガネが新作のお菓子を作ったの。それで、皆で試食してみようという事になって、遠夜を呼びに来たの。
だから、早く行こっ」

そう、にっこり笑って、神子はオレの手を握って、引っ張った。

オレは、神子の手を握り返しながら、一緒に歩き始めた。



神子の思い人は、オレではない。

だから、オレのこの気持ちを神子に知られてはいけない。

知ったら、神子はとても困るだろう。

だけど、神子への思いは募る。

それなら、オレは、神子の為に歌をうたおう。

神子の横で、神子への思いを歌に乗せて…。

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