第2回 2008年12月
□また来年/忍人×千尋(恋愛ED後)
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中つ国の王になって、半年以上。
まだまだ至らぬ所ばかりで、毎日忙しい日々を送っている。
今は、年の瀬に近い事もあって、王宮内は慌ただしい状態が続いていた。
私は、机の上に置かれている書簡の山を見て、ため息を一つ吐き、ぽつりと独り言を口にした。
「まだ、こんなにもあるのか…」
ずっと、机に向かって仕事をしていたのだ。愚痴の一つも出る。
少し休もうかどうしようか迷っていた時、部屋の扉からノック音がした。
「どうぞ」
そう扉の向こうの相手に一言かけると、扉が開いて、ノックの主が部屋に入って来た。
忍人さんだった。
「どうしたんですか?」
と、私が尋ねると、
「…椅子に座ってばかりだと、身体に悪い。
休憩がてら、私と一緒に中庭に出ないか?」
と、ぶっきらぼうに言った。
私は、一瞬、何を言われたのか分からなかったが、言葉の意味を理解した瞬間(とき)、顔が真っ赤になるのを感じた。
それは、忍人さんなりのデートの誘いだったからだ。
良く見ると、忍人さんの顔も赤く染まっていた。
顔を見られているのに気付くと、私から顔を背けながら、
「早く行くぞ!」
と、部屋をさっさと出てしまった。
慌てて、部屋から出ると、忍人さんは部屋の入り口近くで待っていて、無言で私のを握って、歩き始めた。
相変わらず、忍人さんは無言のままだったが、これからもずっと、私の傍にいて見守ってくれると思うと、とても幸せな気分になった。
だから、私も忍人さんの手を握りしめて、耳元でこうささやいたの。
「忍人さん。来年もまた宜しくね。」