わんダフル☆サマーD


旭が出て行った扉を見てひとつため息をつき、だがいつまてもそうしていてもしょうがないと振り向く、と

「…なんだよラ、ラーマ。」

仏頂面で此方を睨む愛犬(仮)が居た。

「…わかんなかったのは悪かったって。でも人間になるとかふつう、」
「あいつは主の番(つがい)に相応しくねえ。」

「は?何?ツガイ?」
ツガイってなんだ。日本語難しいな。てかこいつなんで俺が知らない言葉喋れんだろ。英語も喋れんのか?

ぐるぐる思考を飛ばしていると、ラーマの尻尾(今気付いた)がしょげ、耳が垂れた。そして瞳にみるみる膜が、

「あ、主、お、お、おこっ」
「うわあああ怒ってないから!ほ、ほら買い物行こうぜ!な!!」

ぐしゃぐしゃと頭をかき回す。ああめんどくせえ。



「あ、ある…」
「だから名前で呼べって。なんだ?」

「こ、んなにフクは、い、要らねえ…。」

今俺とラーマは学園を出て、町のショッピングモールに来ている。先ず服だ、と思って適当な店に入ったんだが…こいつが飛び切りの美形なもんで、色んな服が似合う似合う。
面白いので派手なのとか着せたりして着せ替え人形にしていた。つか店員がすげえ持ってきたんだよな。流石美形。

「いやもう買う服は決まってんだけどな。」
せっかくだしな。

そう笑顔で言うと顔を赤らめながら青ざめるという器用な事をした。


「ある…け、圭、ぼたん、が、」

「ああ、ちょっと待て。」

カーテンを開け周りを少し見回してから試着室の中に入る。ラーマはどうやらボタンだとか、チャックとか、細かい作業がまだ慣れないらしい。

「にしてもお前…筋肉ついてんな。」

犬の時だといまいちわからんかったが。流石数々のトロフィーを手に(足か)しただけのことはある。

「…触っても良いか?腹。」

「お、おう。」

割れた腹筋をぺたぺたと触る。いや男いける身としてはこう…下心が疼くというか。別にどうこうするわけじゃないけどいつ犬に戻るかわかんないし役得…自分の犬にセクハラってのも虚しいがこんな超絶美形に触れる機会なんて滅多にこねえし…。

などとモヤモヤしながらも手はしっかり触りまくる。いやほら可愛い女の子とかいたら見ちゃうだろ。だれに言い訳してんだ俺。

「ふ…ッ。」

息遣いが聞こえ顔を上げた。まずい怖がらせたか、

「お…い、………どこの生娘だよ…。」

ラーマはシャツを掴んだまま顔を真っ赤にしてぎゅうと目を硬くつむっていた。

「……よし!もうこれでいいな!ホラボタンつけたぞ!下もこれでいいから終わったら外出てろ。金払ってくるから。いいか、動くなよ。」

なにかとんでもない扉が開かれそうだったのでそう矢継ぎ早にいいつけ、試着室を出た。

「あ、これ全部会計で。あと領収書を。」

服を持って待ち構えていた店員にそう言付けた。全部理事長に払わせてやる。


前拍手はその他にあります



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ