短編部屋1
□遠すぎる
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私はふらりと外に出た。
街でいろんなカップルを見掛けるたび、辛くも楽しかった過去がよみがえる。
私は悲しくなり、そのカップルから視線をずらす。
ふと、黒い格好をした男の人が目に入った。
刀を腰に差している
栗色の髪――。
総悟―――…。
声を出して貴方を呼びたい。でも、もう貴方の名前を呼ぶことすら出来ない。
貴方の隣には彼女がいる。
貴方は楽しそうに、幸せそうに笑っている。
また胸が苦しくなる。息ができなくなる。本当にもう終わってしまったのね。
私は心のどこかで期待していたのかもしれない。また総悟が戻って来てくれるって……。
そんな小さな期待も一気に崩れていく。
遠すぎる
貴方に
手を伸ばしてみても
届かない。
私は気付けばあの時の様に涙を流していた。