短編部屋

□潤い
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少しずつ風も冷たくなってきて葉っぱたちも赤や黄色に色付いてくる季節がやってきた。

そうお肌も乾燥してくる季節。

寒い季節になるとすぐお肌が乾燥してしまうので、
私はいつもこのくらいの時期から念入りに手入れをしている。


あ、そういえば保湿クリームもう残り少ないんだった。

もうそろそろ買わな「おい、お前さっきから上の空で仕事進んでねぇーじゃねえか!!」


「あだっ…」

土方さんが投げつけてきたペンがおでこにぶつかった。
けっこう痛い。

「ったくその書類夕方までには片付けろよ」

そう言うと土方さんはわざわざ私に投げつけたペンを拾いにこちらに近寄ってきた。


その時ふと土方さんの顔を見る。





あ、


「土方さん、唇乾燥してますね。切れてますよ。ちゃんとお手入れしてますか?」

「あ?」

いきなりコイツは何を言い出すんだという顔をしながらこちらを見る。

「お手入れ、してないでしょう」

「なもんするわけねーだろ、女でもねェのに」


「今時は男の子でもちゃんと自分用のリップとか持ってるんですよ。というか痛くないんですか?」

「俺には関係ねーよ。それにこんなの気にするほどでもないしな」



「えー、駄目ですよ。ちゃんとお手入れしないともっと酷くなりますよ。もしかしたらたらこ唇になるかも…」

「なるかァァ!!お前、そしたらもう何年も前にたらこ唇になってるわ!」

「え…てことは土方さんリップつけたことないの?」

「ねーよ、あるわけないだろ」


痛そうなのにな。
そう思いながら唇を見つめていると、突然私の頭の上で電球が光った。

そうだ私のリップを貸してあげよう!!


私は早速、作戦を実行するために懐からリップバームを取り出し土方さんに忍び寄る。

「おまっ、書類終わらせろって言っただろォが!」

「まーまー。ちょっと動かないでくださいね」

私はそう言うと素早くリップを指にのせ土方さんの唇にそっと塗る。
すると土方さんは驚いたのか瞳孔がいつもの1.5倍開いて私を睨んだ。

「てめ、何しやがる」

「リップクリームです。せっかく塗ったんですから制服で拭うのとかはなしですよ」


「…ッチ。余計なまねしやがって」

そう言う土方さんの耳はさっきより赤くなっていた。
私は嬉しくなってなんだか胸も温かくなってくる。


「ふふっ、鬼の副長さんともあろうお方が照れてるなんて」

「ばっ、照れてねぇよ!!」


「耳だけじゃなく頬っぺたも赤くなってきてますよ土方さん」

私がそうからかうように言うと、土方さんは拗ねたのか黙って書類整理をし始めた。



本当可愛いお人だこと。

でもこんな土方さんが見れるのはめったにないかもしれないから、暫くは彼を観察してよう。





潤い






お肌も乾燥してそうだから、あなたが寝ている間にでも化粧水をつけてあげましょうか。

頼むからそれだけはやめてくれ。

ふふ、そう言われると余計にやりたくなるわ。


……………。



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