Story

□真剣な志
1ページ/1ページ






「なぁ、タケル」


俺のバイト先のバーで、

酔いつぶれている瑠可が呼んだ


「何ですか?」


手元ではグラスを扱いながらチラッと横目で瑠可を見た


「私どうしたらいんだろ」


酒の入ったグラスを傾け、それを眺めながら瑠可が言う


「美知留ちゃんのこと?」


俺がそう言うと瑠可はこっちに顔を向けた


「…なんでそう思った?」


「瑠可がそんなに悩むとしたら、大抵美知留ちゃん関連だろ?」


「…まぁ、そうなんだけど」


瑠可は目線をグラスに戻した


「最近、美知留が本当のことを話してくれないっていうか、嘘ついてると思うんだよね」


「あの美知留ちゃんが?」


「そう」


「隠し事してるってこと?」


「うん」


「…」


美知留ちゃんが、瑠可に…
それは一つや二つありそうなもんだけど


「美知留が付き合ってる奴いるだろ?…そいつの事になると、なんか誤魔化してるっていうかさ」


「美知留ちゃんだって、そういうところあってもおかしくないんじゃない?ましてや彼氏の事となると。そういうお年頃なんだよ」


俺は動かしていた手を止め、瑠可に向き合いながら言った


「…そうなのかな」


「きっとそうだって。心配することないよ」


そう言って瑠可を納得させようとした


「でも、もし美知留に何かあったら私が許さない」


その時の瑠可の表情は真剣そのもので、強い意志が感じられた


本当に、大切な人なんだって思った


すると瑠可はグラスに入っていた酒を一気に飲み干し、空のグラスを俺の目の前に差し出した


「もう一杯!」


「はいはい」





きっと瑠可は、誰よりも美知留ちゃんの事を大事に思っているだろう


そんな美知留ちゃんが羨ましいと思ってしまう自分がいる


だけど、

こうして瑠可の気持ちを聞いてあげられる立場にいる自分も、それはそれでいいのかもしれない


今の俺に出来ることは、そんな瑠可や美知留ちゃんを見守っていることだけだ





.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ