Story
□真剣な志
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「なぁ、タケル」
俺のバイト先のバーで、
酔いつぶれている瑠可が呼んだ
「何ですか?」
手元ではグラスを扱いながらチラッと横目で瑠可を見た
「私どうしたらいんだろ」
酒の入ったグラスを傾け、それを眺めながら瑠可が言う
「美知留ちゃんのこと?」
俺がそう言うと瑠可はこっちに顔を向けた
「…なんでそう思った?」
「瑠可がそんなに悩むとしたら、大抵美知留ちゃん関連だろ?」
「…まぁ、そうなんだけど」
瑠可は目線をグラスに戻した
「最近、美知留が本当のことを話してくれないっていうか、嘘ついてると思うんだよね」
「あの美知留ちゃんが?」
「そう」
「隠し事してるってこと?」
「うん」
「…」
美知留ちゃんが、瑠可に…
それは一つや二つありそうなもんだけど
「美知留が付き合ってる奴いるだろ?…そいつの事になると、なんか誤魔化してるっていうかさ」
「美知留ちゃんだって、そういうところあってもおかしくないんじゃない?ましてや彼氏の事となると。そういうお年頃なんだよ」
俺は動かしていた手を止め、瑠可に向き合いながら言った
「…そうなのかな」
「きっとそうだって。心配することないよ」
そう言って瑠可を納得させようとした
「でも、もし美知留に何かあったら私が許さない」
その時の瑠可の表情は真剣そのもので、強い意志が感じられた
本当に、大切な人なんだって思った
すると瑠可はグラスに入っていた酒を一気に飲み干し、空のグラスを俺の目の前に差し出した
「もう一杯!」
「はいはい」
きっと瑠可は、誰よりも美知留ちゃんの事を大事に思っているだろう
そんな美知留ちゃんが羨ましいと思ってしまう自分がいる
だけど、
こうして瑠可の気持ちを聞いてあげられる立場にいる自分も、それはそれでいいのかもしれない
今の俺に出来ることは、そんな瑠可や美知留ちゃんを見守っていることだけだ
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