第Y章
Pig and Pepper.

アリスが目を付けた家へ突然、魚の従僕が大きな手紙を持ってドアを叩く。すると中からは蛙の従僕がやって来て手紙を受け取った。

「公爵夫人へ、女王陛下からクロケー・ゲームの御招待です」
魚従僕がそう言えば蛙従僕はこう言う
「女王陛下から、公爵夫人へのクロケー・ゲームの御招待ですね」。

過ぎ去った魚従僕。蛙従僕はその場へぼんやりと空を眺めて坐り込む。アリスは蛙従僕と奇妙なやり取りをしてから、公爵夫人の家へ。

(ーーこの事から魚従僕は女王陛下の配下、蛙従僕は公爵夫人の配下と言うことが読み取れる)

中に入れば噎せ返る様なコショウの匂いと、飛翔する食器、赤ん坊の鳴き声がアリスを迎えた。

家の中には赤ん坊を抱いた醜い顔の公爵夫人と(この公爵夫人には実在のモデルが居た。画家クウェンティン・マシュースの描いた世界一醜い女性像である)、火箸を投げる料理女…それにニヤニヤ笑いを浮かべたチェシャ猫が居た。誰も存在感の強い者ばかりである。

アリスが公爵夫人に訊いた第一の発言は、「あの猫はどうしてあんな風に笑っているのかしら」と言う質問だ。

その問いに公爵夫人は
「チェシャ猫だからさ」と答える。何とも大ざっぱな答えだ。

公爵夫人の言う「チェシャ猫だから」というのには幾つかの説がある。

@著者キャロルの出身地であるチェシャ州ではチーズ作りが盛んであり、チーズに寄ってくるネズミと其のチーズを頂いて、一石二鳥の収穫で思わずニンマリ笑顔を浮かべるから。

Aイギリスの慣用句
「grin like a cheshirecat」(チェシャ猫の様にニヤニヤ笑う)から登場してきた猫だから。

この二つの理由である。

もっとも、キャロルの存在しない今では解明の不可能な深遠なる神秘となるのだろうが。

ーー話を戻し、公爵夫人が抱える赤ん坊を皆でぞんざいに扱っている事を、奇妙に思わないだろうか。

料理女は、暖炉器具やら皿やら大鍋やらを手当たり次第に赤ん坊へ投げつける(この時公爵夫人も巻き添えを喰っているが)。

公爵夫人に関しては赤ん坊に残酷な子守歌を聴かせながら、乱暴に上下へ赤ん坊を放り投げたりしている。

Speak roughly to your little boy,
And beat him when he sneezes,
He only does it to annoy,
Because he knows it teases♪
(CHORUS)
Wow!Wow!Wow!

子守歌は「くしゃみをしたならブッ叩け」などという言葉が散りばめられているのだ。子供というものは幾らか残酷なものを好むが、少し大人としては頂けない。

公爵夫人は女王陛下とのクロケー・ゲームの支度で家を出るため、
「さあ!良かったらこの子の世話をしておくれ」と途中でアリスに赤ん坊を投げつける。

あの家へ居たら殺されるとのアリスの解釈で、赤ん坊を外へ連れ出すことに。アリスは抱いていた赤ん坊が徐々に豚になっていくのを見て、
その豚を地面へ下ろし、森の中へ逃がした。

すると数ヤード先の木の上にチェシャ猫がニヤニヤ笑って座っているのを発見し、何処へ行けばいいのかを問いた。

アリスはチェシャ猫に帽子屋と三月ウサギの家の方角を教えて貰い、三月ウサギの家へ向かった。

三月ウサギの家はアリスの身長に合わなかったので、アリスは身長を2フィート(約60cm)に伸ばして家へ向かった。






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