□秋月さんから。
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ゆるやかな風に吹かれて、サラリと流れる茶色の髪。
気だるそうな瞳がアスファルトを見つめている為か伏せ気味になっていて、ドキッとしてしまう。



少し距離を置いて歩いている僕は、あなたに気づかれてしまわないように盗み見ていた訳ですが、うっかり見とれてしまったせいで止まってしまった歩みにあなたも足を止めて。





「? どうかしたか。」





あなたに声を掛けられて、はっと我に返りましたが、僕の視線の先に顔を向けて何もない事に首を傾げている仕草に堪らず微笑が零れてしまう。





「・・・何が可笑しいんだよ。」





怒気を含んだような声での発言でしたが、その顔を見れば恥ずかしがっているだけなのが解って、思った事を素直に口にしてみる事にしました。





「いえ。・・・あなたは可愛い人だなと、改めて思っていただけです。」


「ばっ・・・!
・・・そういう事を素面で言うな。恥ずかしいだろう、俺が。」





頬を薄紅色に染めてそっぽを向いてしまう動作も可愛いと思ってしまう原因だという事に、気づいていないあなたに、僕の笑みは深まるばかり。





「大好きですよ、キョン君。」





僕を置いてきぼりに、足早に行ってしまうあなたを駆け足で追いかけ、背後から抱きしめて。
溢れんばかりの気持ちを告白する。


一瞬、動きを止めたあなたですが、鬱陶しいと僕を振り払って再び歩き始めてしまい。





「・・・い、一応だな。言っておくが、俺もお前がキライじゃないぞ。」






そして、十分に距離を取ってから口にされた言葉に、僕は飛び上がって踊ってしまいたくなるなる程に舞い上がって。





「キョン君・・・!」





まだ「好き」とは言って貰えませんが、恥ずかしがり屋なあなたの譲歩に、避けられてしまう原因と理解しつつも緩んでしまった顔であなたを追いかけてしまうのです。





「そのニヤケ顔のままで俺の方に来るなッ!!」





露骨に嫌そうな顔をして、本格的に走り始めたあなたと、今日も始まった追いかけっこ。



これが僕たちの日常風景。









fin.
 

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