レツゴ文

□遠くて近きもの
4ページ/7ページ






「ブレットは本当に本当に優しくて良い人で、リーダーなんて立場じゃなくても頼り甲斐があるし、一緒にいられるのは凄く嬉しい。
好きだっていう気持ちに嘘はない。
……だけどね、そう思えば思うほど、自分の気持ちが高まれば高まるほど、何故か距離を感じちゃうの。
こうやって隣にいるのにも関わらず、なんかどんどん段差が広くなっていくような気がして………そう考えてたら、いつしかブレットを見上げることしか出来ないのかな、て。
そんな私はブレットと釣り合わないのかな、って……。」





私は率直な気持ちをそのまま述べた。
ここまで来たらもう隠しても無駄なことなのだと、それに自分から振りだしたことなのだから、とよぎった。
涙こそは出なかったものの、何となく切ない気持ちになった。






私が述べている間、彼は一言も喋らなかった。
私が言い終わったのを見計らって、彼はボソッと呟いた。



「ジョーは俺のことを、そういう風に見ていたんだな……………心外だ。」


と読んでいた本を閉じた。
パタン、と閉じる音は空疎に思えた。
そしてその閉じた本を目の前のテーブルに置いた。





返す言葉が見つからなくて、私は下を向くことしか出来なかった。



「俺の思いは空回りしていたってことか……ショックだな。
俺だけが自惚れていたみたいで。」



と彼の独り言のように吐いた言葉に私はハッとなった。


空回り?自惚れ?そんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかったから。
何に対して空回りして自惚れていたのか、もしかして彼もまた私に何か気持ちを抱いていたのか、と疑問が浮かんだ。








「なあ、ジョー。」




そんなことを考えているうちに、また名前を呼ばれたと思った束の間、突然肩を抱かれグイッと引き寄せられた。
こっち向いて、とブレットは言い、私は下に向きかけていた視線を、言われるがまま彼に向けた。
見るとブレットはバイザーに手を掛け、そのままそれを外し、彼の顔が顕になった。
そして彼の眼差しが降り注がれた。



見るたびに思う、綺麗な瞳だな、と。
ブレットそのものを表しているような、そんな気がする。
私は吸い込まれるようにその瞳を覗き込む。
目は口ほどに物を言うように、伝わってくるものがあった。
それが怒りなのか悲しみなのか、どの感情なのかわからない。
しかし、その中にも暖かなものは確実にあった。



そして思わずドキッと見とれてしまう自分がいた。
 
 
 
 
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ