レツゴ文
□遠くて近きもの
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チラッと横目でブレットを見た。
改めて彼は凄い人だな、ということを認識した。
その知能の高さは誰もが認めるもので、
でも決して衒学的ではなく、自分が出来るからって他人を馬鹿にしたり見下したりなんかしない。
彼はそんなことをする人じゃない。
誰にだって隔たりなく、対等に接してくれる。
リーダーという立場にあってもなくても、信望は厚い。
繊細で情味ある一面もあって………もしかしたら惚れた欲目で、大袈裟に言っている部分があるかもしれない。
でもそれだけ、いろんな角度から見てきたから、彼をたくさん知ってる。挙げきれないくらい。
だけど………その度に思うことがある。
(こんなに傍にいるのに、やっぱり届かないな……。)
彼の存在は遥か“上”にあるようにしか思えなくて。
そんな私は今足をついている場所で、そこからいつまでも見上げることしか出来ないのかな、両手をこれでもか、というくらいにまで伸ばしても、指一本すら届かないのかな、と。
より一層、遠のいていく気がするの。
彼を知れば知るほど。
たとえ同じ場所にいても、同じ時間を過ごしても、私の見ている先に彼の視線の先にあるのはきっと別なもの。
いつまでも焦点は合わない。
………そう思えてならない。
(………! 私いつの間にこんなこと考えているんだろう。)
不安だとか嫉妬だとか、そんな気持ちではないはずなのに。
現に、こうやって隣にいるだけでも心は満たされているはずなのに。
こんなことを考えたって、何も芽生えないとわかっているのに。
なぜか漠然とした、モヤモヤとした何かが確実にあって、それが私を取り巻いていた。
(釣り合わない……のかな、)
一番考えたくないことが頭をよぎった。
けど、もしかして………何とも言いようのない気持ちが覆った。