レツゴ文
□行き合いの空
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ジョーはその場にゆっくりと立ち上がった。
「この空の青さ、しっかり刻み付けておくわ。」
好きになってみせるわ、と言うと下から、ああ、と返ってきた。
ジョーは視線を空に向ける。
雲が肉眼で捕らえられるほど、穏やかに流れていた。
それは風が吹いている証。
あの風はどっちの風なのかな?いや、もしかして引かれ合って一緒になったのかな?
たとえ一時のことでも、1年に1度でも、会えることはとても喜ばしいことなんだなと、そしてそれは悲しみに非なるものなんだ。
これから“二人”の間に空白の時間の方が多くなっても、その気持は本物だって………
― 信じていいんだよね?
リョウの口から、ん?と漏れた。
「何か言ったか?」
「ううん、何でもない。」
「?」
敢えて言わないでおこうと、その気持ちは心の奥にしまった。
ジョーは立ち上がったばかりなのに、また座り込んだ。
そして、リョウの腕を組むように抱きついた。それは一瞬の出来事。
「なっ……////」
「WGPが終わっても安心ね。」
良かった、と嬉しそうに笑う彼女を見たらこの腕を離すことなんて出来なくて。
ただ肩にかかる温もりを、彼は嬉しさを隠しながら感じていた。
またこの季節が来れば
引き合うように巡り合う“行き合いの空”。
それはいつかの夜空を思い浮かばせる空でもあった。
願いを託せばきっと届きそうな…………
“強い何かがきっと繋がっている”
そう思わせるような青の鮮やかさが今日も広がっていた。
そしてそれに応えるかのように、風が吹き抜ける。
*終わり*
(→あとがきの)