レツゴ文

□行き合いの空
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「………なんか感慨深い話ね。」


リョウが長らく話した後放った自分の感想。
でも次の瞬間やっぱり兄弟だね、プッとジョーは手で口を押さえて笑っていた。


「リョウだって人の事言えないじゃない!何が『体調管理が甘い』よ!」


さっきの件はリョウの事でもあったんだ、とジョーは笑い声を上げた。


「そ、それは俺がまだガキだったからだ!」


今はそんな事ない、と豪語するリョウだったが、その言葉に説得力はなかった。



「うふふ……でもさ、日本人って凄いね。なんて言うか、外国人にはない感覚を持ってて。」
「そうなのか?」
「うん。そんな繊細に四季の変化を捉えられないわ。」
「そんなに考え方が違うものなのか?」
「外国人って合理的だから。」


ちょっと理解出来ない部分があるかもね、と言うとまあな、と返ってきた。


「リョウが言うように、自然の中で季節が混在するなんて、私も素敵だと思うわ。」


だけど、とジョーは目を伏せた。
突然憂いの帯びた顔をしたのだった。
それに対して、?マークを浮かべたリョウ。
さらに、その時の空もこんな感じだった?、と問いた。
二人の上に広がる青天を見上げて、少し考えてからリョウはそういえばこんな感じだったな、と返答した。



「そっか…。」



ジョーはそっと呟いた。







“どこか悲しいね”








それは聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だった。
ついさっきまで笑っていたのに、ぽつりとその表情は寂しそうだった。



「どうかしたのか?」



リョウは急変したジョーを不思議に思った。



「……なんか、リョウのお父さんの気持ちがわかる気がする。」
「えっ?」


だって、と続けた。



季節は“二つ同時に存在出来ない”
ただ重なることがあっても、それは一時の事であって…四季の流れは逆らうことなんて許されないのだから、
それはつまり離れることを…“別れ”を要するということになる。



「きっとリョウのお父さんもそれをわかってたんじゃないかしら。」


返答も待たずに続ける。


「……せっかく一緒になれたのに、離れなくちゃならないなんて、」





“そんなの、悲しい”






それはまたボソッと呟いた言葉は悲鳴にも似ていて。


リョウはやっと、気持ちを察した。










WGPが始まったのは去年の冬。
時間が経つのは早いもので、WGPが始まったばかりだと思ったら、もう終わりに近づいていた。
このWGPが終われば………





「まさに私たちみたいね……。」


とジョーは苦笑いした。


「まだそんなことを考えないようにしてたんだけど、ね。」
「……悪い。」

俺がこんな話をしたから、と付け足した。

「リョウのせいじゃないわ。……いずれ直面することだし。」



と精一杯に笑おうとした。
けどそんなの無理に決まっていて、すぐにしょんぼりした表情が露になった。
 
 
 
 


この手のことに関して、どんな声をかけて良いかわからず、何をするわけでもなく、ただ時間が過ぎた。
 
 
 
 
 
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