story

□振り回しダーリン
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「ところでさ、俺って刹那に凄い愛されてるのな」
満悦の笑みで抱きついてきたロックオンが俺にそう言う。
「は?」
「だってさっき“ロックオンに惹かれる”って言ってたじゃん」
一瞬で顔が赤く染まる。
「聞いていたのか…!?」
「もちろん。刹那が来ると思ってずっとエクシアの傍に居たから」
「…最悪だ…」
まさかあんな恥ずかしい台詞を聞かれていたなんて。
しかも本人に。
「なんで?俺は嬉しいけどなぁ〜」
「…っうるさいバカロック!」
にやにやしているロックオンに一発入れてやる。
「うっ…!…せつなぁ…」
「知るか」
伸ばされた手を軽く払う。
せっかく急いで帰って来たのにな、とロックオンが少し拗ねる。
「そういえば、ロックは任務だったんじゃ」
自分の為にわざわざ急いで片付けてきてくれたのか?
疲れているはずなのに俺を一番に祝いたかったって言ってきてくれたとしたら……
口を開こうとしたが、それを言うことはなかった。
「そう、刹那の為に取り寄せしたプレゼントを引き取りに行くっていう重要任務だったんだよ」
「………は?」
予想外の答えにまだ思考が追いつかない。
プレゼントを引き取る…?
「なんか店には置いてなくってさ、取り寄せするしかなかったんだけど。まさか誕生日当日ギリギリでくるとはなー」
危なかったなー!とロックオンが笑う。
その笑い声と同時にさっきまで脳内にいた「任務を急いで片付けて疲れているはずなのに一番に祝いたかったと俺に気を使ってわざわざプレゼントを持って来てくれた」という長ったらしいがかっこいいロックオン像が崩れ落ちた。
というかプレゼントを取りに行っていたということは、仕方なく任務で離れたとか連絡が取れないという訳ではなく。
しかもそれは任務だと言っていた皆も知っている訳で。
(…俺のプレゼントを取りに行ってくれたのに何故だか凄く腹が立つ)
自分は結局ロックオンの行動に振り回され寂しくなったり不安になったりしていたのか。
「でさー、俺一人抜けるだけじゃバレるからってティエリアにも着いてきてもらって」
にこにことロックオンが話す度にふつふつと怒りが沸いてくる。
「まぁ結果的には誕生日に間に合ったから良かったよ」
これがトドメ。

「おい、何が結果的には良かった…だ」
「え?」
「最初からちゃんと言えば良いだろう!バカロック!」
「で、でもムードとかが」
「知るか!」
抱きついていたロックオンから離れてエクシアから降りる。
「せ、刹那ぁ!?」
「うるさい、一番遅くに祝ったくせに」
「一番早く、だろ!?俺はソランとして刹那を…っ」
「エクシアの方が早かった」
振り返ってロックオンを見つめる。
「残念だな、どっちにしろエクシアに負ける要素は無いが」
その一言でロックオンが固まる。
俺はそんなロックオンをさっさと無視して自室に向かった。





「刹那・F・セイエイ」
呼び止められ振り向いた目線の先にはティエリアがいた。
「…そういえばロックオンに連れ回されたらしいな。すまなかった」
「いや、君が謝ることではない」
珍しい態度のティエリアに少し驚く。
「俺とロックオン・ストラトスだけがいなかったことに疑問はなかったのか?」
すぐにバレると思っていたのに、とティエリアが言う。
「…俺はてっきりティエリアはヴェーダの所に引きこもっているのだと思っていた」
正直に告げるとティエリアの表情が一瞬引きつった。
「万死に値する!君は俺を何だと思っているんだ」
「ヴェーダ馬鹿」
「そういう君もガンダム馬鹿だろう!」
「ありがとう、最高の褒め言葉だ」
俺のその一言にティエリアが溜め息をつく。
「やはり変わっているな」
それはティエリアもだ…と言おうとしたがやめておいた。
「刹那・F・セイエイ」
ふいに名前を呼ばれ横を向くと、いつもの表情のままのティエリアが静かに言った。
「誕生日おめでとう」
「…ありがとう」
「…あと彼も随分悩んでいたから優しくしたらどうだ?」
もしかしてロックオンとのやり取りを聞いていたのか?と思ったがとりあえず頷いた。
「じゃあ俺は部屋に戻る。おやすみ」
「…ああ、おやすみ」

去っていくティエリアを見ながら、このあと自室に来るであろうロックオンへの言葉を呟いた。

プレゼントよりもロックオンが傍に居てくれる方が嬉しいと。







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