家族パロ

□たまには子供らしく!
2ページ/4ページ

どれくらいたったのだろうか。
気付けば車の外の景色は変わり、周りも少し騒がしい。
…どうやら車に揺られているうちに眠ってしまったようだった。
隣で頭を優しく撫でているティエリアに声をかける。
「…ティエリア、此処は…」
刹那が起きたのに気付いたティエリアはふっと優しい笑みを向ける。
「おはよう刹那。まだもう少し寝ていても良いんだぞ?」
ふるふると首を横に振る。
「もう十分寝た」
「そうか」
そこで隣に居たハレルヤと、前に乗っていた二人が居ないことに気が付いた。
「ハレルヤたちは何処行ったんだ?」
ティエリアが少し顔を反らした。
「ロックオンは飲み物を買いに言った。ハレルヤは車に酔ってそこら辺で吐いている。…アレルヤはその付き添いだ」
ティエリアの様子が何かおかしかった。
不安そうな瞳が揺れている。
「……ハレルヤが心配なのか?」
ティエリアがぴくっと僅かに反応した。
「な!そ…、そんなわけ、無い、だろう…っ!」
そう言ってはいるが、やっぱりその瞳は不安の色が揺らいでいた。
「ハレルヤなんて別に…っ!…どうせそこら辺でだらしなく吐いているだけだ!」
「だぁーれが吐くかァア!!」
叫び声のした方へ振り向くとハレルヤがこちらに走ってきていた。
…色々聞こえていたらしい。
アレルヤが苦笑いしている。
「誰が何だってぇ?」
ハレルヤがティエリアに詰め寄る。
「…聞こえなかったのならもう一回言ってやろう。だらしなく酔って吐いていたと」
「吐いてねぇ!この男女!」
「おと…っ!」
ティエリアが一瞬だけ物凄く不快な顔をしたが、ハレルヤのいつもの様子を見て
ふっと表情を緩めてぼそりと呟く。
「……だから酔い止めを飲めと言ったんだ」
ハレルヤがぽんぽんと俯くティエリアの頭を叩く。
「………気ィつける…」
もうティエリアから不安の色は消えていた。
「……………」
「…不思議でたまらない、って顔してるね?刹那」
思っていたことをあっさりアレルヤに言われてしまった。
…そんなに顔に出ていたのだろうか。
「今の刹那だとまだわからないかな?」
アレルヤは何かおかしそうにクスクスと笑った。
「刹那とそっくりなのにね」
「……そっくり?俺が?」
「うん。そっくりだよ、ティエリアと」
余計わけがわからない。
ティエリアと、そっくり?
自分が?
頭を悩ませるそんな俺を見て、アレルヤは優しく笑った。


そこにロックオンが戻って来た。
「ジュース買って来たぞー!」
ロックオンと目が合う。
「ん、起きたのか。おはよう刹那」
そう言ってにこやかな顔でジュースを渡された。
「…ロックオン、此処は…」
ずっと気になっていたことを再び口にする。
「見ての通りだ」
「………遊園地…」
「その通り!」
ロックオンがピンと人差し指を立てウィンクをした。
「…何故だ?」
何処かウキウキしているロックオンに疑問が浮かぶ。
何故急に遊園地になんて来るんだ?
「…刹那、今日何の日かわかる?」
突然アレルヤが聞いてきた。
今日?
何かの予定でもあったのか…?
「わからない」
素直に言うとハレルヤがありえない、と手を上にあげる。
「刹那はあんまり行事に関心がないだけだよ」
アレルヤが苦笑する。
ブーブー言うハレルヤにフォローをするアレルヤを差し置いて、ティエリアがさ
らりと答えを言う。
「今日は子供の日だ」
「…そんなさらっとυ」アレルヤが再び苦笑いした。

子供の日……?
全く覚えていなかった、と言うとハレルヤは溜め息をついた。
「子供の日って言うのはだなァ、餓鬼が大人に何なりと命令出来る日なんだぞ」
ハレルヤが笑いながら言う。
「ハレルヤ、違うでしょ!命令なんてそんな日じゃ…」
「んだよ、大体そんな感じだろ?」
ハレルヤがめんどくさそうに答える。
「大体でも合ってないよ!」
「……でもよ、あれ見てみろよ」
「?」
アレルヤが振り返った先にはロックオンという名のブラコン野郎が居た。
「俺は刹那が言うことなら何でも聞くぞっ!」
ロックオンは声高々にそう告げた。
「…ほらな?」
「…………あれは別物だよ、ハレルヤ…」
「ただのブラコンだ、万死に値する」
後ろでぐだぐだ言っている三人に構わずロックオンは刹那を後ろから抱き締める

「刹那は何がしたい?せっかくの子供の日なんだから何か言ってよ」
ロックオンの一言に後ろ三人が「俺たちも子供なんだけどなー」と不満そうに漏らす。
が、ロックオンのブラコンっぷりはよく知っているため深いツッコミはしない。
刹那がおずおずと口を開く。
「…じゃあ」
(((た、頼むのか!?)))
「僕は、てっきり刹那が断ると思ってたよ…」
アレルヤがポツリと漏らした一言に二人が同じ答えを呟く。
「…俺もだ」
「明日雨なんじゃねぇか?」
「ハレルヤ、失礼だよ…同感だけど…」
刹那は一体ロックオンに何を頼むのかと見つめる中。
「ガンダムだ」
刹那が言った。
「……ガンダム?」
ロックオンが聞き返す。
「そうだ、ガンダムだ」
刹那以外の頭の上にハテナが浮かぶ。
「此処にはガンダムが居ると聞いた」
少し沈黙。
「……あ、ああ!ガンダムね、ガンダム!」
ロックオンが苦笑する。
「……なぁ、なんだ?ガンダムって」
?を浮かべたままのハレルヤに
「この遊園地で行われるガンダムショーのことだろう」
ティエリアが的確に答える。
そうゆうこと…とハレルヤが納得する。
刹那らしいと言えば刹那らしい。
「ガンダムに会いたい」それは純粋な気持ちだろう。
長男とは別で。
せっかくだから叶えてやりたい、でも…
((((それ以外にはないのかよ……?))))
四人はそれぞれ同じ思考に辿りついた。
珍しく刹那がお願いしたのになんだかマニアックすぎてyesと返すのに間が空いた。
「駄目…なのか?」刹那がおずおずと言う。
「な、だっ、駄目なわけあるかっ!良いに決まってるだろ刹那!」
しゅんとした刹那を見たロックオンが大声で言った。
「本当か…?」
刹那が嬉しそうな顔をした一瞬で、長男の頭にある理性のブレーカーが落ちた。
「せっちゃんっっ!!!」
ぎゅむ、と刹那がロックオンによって押しつぶされる。
だが刹那は「ガンダムに会える…」と目をキラキラと輝かせ、ロックオンは眼中に入っていないようだ。
「ロックオン!」
鋭いティエリアの声が聞こえた。
「あれだけ言ったのにも関わらず…、しかも外で…万死に値する!」
どこに入れていたのか、ティエリアが辞書のように分厚い本を取り出す。
そしてそれをロックオンに向けて振り上げる。

「…………平和だね、ハレルヤ」
「ああ……」
二人はジュースを飲みながら呟いた。
まもなくその会話はロックオンの悲鳴によって終わった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ