story

□少年の祝福
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三月三日。
刹那はこの日が何の日であるか知っている。
ロックオンの、誕生日だ。


「なんじゃこりゃ?」

それがロックオンが最初に言った言葉だった。
朝起きたら自分の部屋がまるでホテルのように綺麗に整っている。
…一体どうなってんだ?
しかもなにやら良い匂いがする。
「ロックオン、オキタ!オキタ!」
そう言ってぴょんぴょん隣で飛び跳ねたのは相棒のハロ。
「ハロ、こりゃ一体どうなってんだ?」
その問いに答えたのはハロではなく、良い香りのティーカップを運んできた人物だった。
「俺がやった」
それだけ言ってティーカップを差し出す。
「刹那が?」
一体、何故?
しかも何故自分の部屋に?
いろんな疑問が頭に浮かぶ。
「今日は、ロックオンの誕生日…だろ」
刹那が少し俯く。
顔は心なしか、少し赤くなっている気がする。
「…刹那、お前…俺の誕生日、覚えてたのか?」
意外、だった。
刹那とは確かに恋人同士だが、刹那はあまり甘えたりせず、ロックオンの一方的な想いが大きいと思っていた。
それだけに覚えてくれていたことが嬉しい。
「…恋人の誕生日くらい、覚えてる……」
刹那が自分の事を"恋人"と口にしてくれたのがロックオンを余計嬉しくさせる。
そしてそれと同じくらいの驚き。
どうやら顔に出ていたらしく、刹那は照れ隠しにハロを抱いて、赤く染まった顔を見られないようにした。
「……早く飲め」
受け取ったティーカップに口をつける。
ほんのりと良い香りと丁度良い甘さ。
「…どうだ?」
「ん、美味しいよ。…うちのせっちゃんが入れてくれたのなら、何だって美味しい」
本心をまんま笑顔でにっこりと言ってやる。
「……馬鹿ロック…」

誕生日、一緒に過ごせるだけで、それだけで十分。

刹那はそれに気づいては無いみたいだけど…


優しくキスをすると刹那はますます頬を染めた。


「Happy birthday…ロックオン」

「ありがとう、刹那…」


君が居るだけで幸せ!

それは恋の魔法。



「産まれてきてくれて、ありがとう…ニール…」

それはそっくりそのままお返しすることにしよう…








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