story

□甘いスイーツはいかが?
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「よし…作るぞ、アレルヤ!」
そう言ってやる気に満ち溢れた顔でシャルの袖を捲る彼の名はロックオン・ストラトス。
今日は彼等にとって、とても大事な日だった。
「手作り、なんて言ったら二人は驚くだろうね」
ロックオンにニコッと笑いかけたのはアレルヤ・ハプティズム。

今日は二月十四日、バレンタインデーだ。
「どうせあいつ等は知らないだろうしな。
知ってたとしてもくれる保障はない…」
「僕達の一方的な好意だからね」
「それを言うな…虚しくなるだろ…」
笑顔なだけにグサッとくる。
だが確かにそうだ。
否定は出来ない。
俺は刹那が好きだ。
だがスルーされてばかり。
だからこそ今回もう一度…。
「気合入れていくぞアレルヤー!」
再度気合を入れ直すロックオン。
「がんばるよ」
そんなロックオンにアレルヤは苦笑した。









「ん、なかなか良い感じじゃないか?」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
ハロの介入によりそれなりに苦戦したが、なんとか完成したチョコレートを互いに試食しあっていた。
「でも、ロックオンの方が美味しいよ。
もしかして、こうゆうの、得意?」
ロックオンは苦笑いしながら答える。
「ありがとな。
でも料理は自炊が出来る程度だよ。
まぁ最近は刹那の為に菓子作りもやってるんだけどな」
どうりで手馴れてるわけだ、とアレルヤは納得する。
「さ、二人がふらふらどっか行く前にさっさと渡してくるか」
「そうだね」

そう言って二人はそれぞれの思いのこもったチョコを渡しに行った。







「…っ!いたっ、ティエリアッッ!!」
ティエリアは食堂に居た。
「…なにか俺に用でもあるのか、アレルヤ・ハプティズム。」
見るからに不機嫌そうな顔をしているティエリア。
だが、此処でくじけるわけにはいかない。
「はい、これ」
いきなり渡される贈りものに、ティエリアは驚いたようだ。
ああ、そうか、と思いアレルヤは言葉を付け足す。
「今日は好きな人にプレゼントを贈る日なんだよ。
ハッピーバレンタイン、ティエリア」
差し出されたチョコをティエリアは素直に受け取った。
「………すまない、ありがとう」
照れて…いるのか?
下を向いているからよく見えないけれど、少し頬を染めているように見える。
「…開けても良いのか?」
意外な台詞に少しだけ驚く。
「もちろん」
ティエリアはそっとリボンを引っ張り、ほどいていく。
「……良い、香りだ…」
一粒だけ、手に取って口に放り込む。
「………どう、かな?」
「……なかなか良い」
「ほんと?」
「…………三月、せいぜい期待しておくと良い」
「………!」
三月、つまり、ホワイトデー。
「ありがとう、ティエリア」
自分の気持ちへの、返事。
それがとても嬉しくて、素直に、心からのお礼。
「……!
べ、べつに行事のルールに乗っ取って返すわけで…。
そもそも此方が貰った側であり、礼をされる筋合いなどない…っ!」
ティエリアは顔を赤くしながら言う。
自分のことを考えてくれていることと、いつもは見れない一面を見れたことに胸が温かくなり、気がついたらティエリアを抱きしめていた。
「…!なっ…なにをする、アレルヤ・ハプティズム…ッ」
そういいつつも、ティエリアもアレルヤをしっかり抱きしめていた。







年上と年下。
恋愛対象になるか?と聞かれれば普通になる、と答える。
だが、それが未成年までいく年の差が出てしまうと、それは不毛な恋になる。
しかも相手は自分と同じ、男だ。
ロックオン・ストラトスは、不毛な恋をしている。
当然の行動だが相手もスルーして口もなかなか聞かないから、今回を最後にしようと思う。
これで断られたらキッパリ諦めよう。
そう思いながら刹那の部屋を目指した。
部屋の前に行くと、刹那が待っていた。
今日この時間、刹那に部屋で待っていて欲しいと言っておいたのだ。
「…遅い」
「悪い悪い」
わざわざ扉の前で待つこともないのだが…。
とりあえず部屋に入る。
「…で、話とは何だ」
刹那は背を向けている。
やっぱり、無理そうだな…。
「これだよ」
チョコを差し出すと受け取ってはくれたが、刹那は目を合わそうとはしない。
「お前の好みがわからなかったから、甘いのと甘さ控えめの。
両方持ってきた。」
「…あ…ありがとう…」
刹那は目を合わせることはしなかったが、少し頬を染めてお礼を言った。
「…せっかく、作って持ってきたから……両方食べる…」
ふいうちだった。
いきなりそんな可愛いことを言ってくるなんて、思ってもいなかったから。
だから、無意識に…俺は刹那にキスをしていた。
「……ん…っ!?」
一瞬刹那が驚いた顔をし、
「…ん……やめろ…!」
拒絶した。
「………悪い。
頭冷やしてくる」
俺は、どうかしていた。


自分の部屋に戻った俺は、刹那への想いを諦めることにする。
そう、この想いは…胸の奥にしまって置いた方が良い。
刹那の為にも、自分の為にも。

「ロックオン!ロックオン!ヘヤノソト!フシンシャ!」
ハロが飛び跳ねてきた。
不審者…?

警戒しながら扉に近づく。
扉が開くのと同時に部屋の扉の前に居たヤツを上から押さえつける。
「一体どちらさん…?
………!」
その人物は、刹那だった。





とりあえず部屋に招き入れる。
「どうしたんだ、刹那」
「…………さっきはすまなかった」
どうやら気にしてたみたいだ。
「良いって良いって、俺が悪かったんだしな…。
嫌な思いさせたし、謝るのはこっちの方だ」
「……!嫌な思いなんか…っ!」
へ?
「い、いや…その……。
ただ、いきなりだったから…吃驚しただけで、嫌だったわけじゃ………なかった」
「セツナ、テレカクシ!テレカクシ!」
刹那が顔を真っ赤にして言う。
「うるさいっ!」
あ、あれ……?
「い、嫌じゃないって…俺、避けられてたよな?」
余計刹那が赤くなる。
「……………顔が近い」
「?」
「…いつも、顔が近いから……」
「セツナ、テレヤ!テレヤ!」
「ぅ…うるさいっ!」
なんだか嫌われてるわけでは無いらしい。
内心ホッとした。
「……そういえば、さっきのは…なんだったんだ?」
ああ、そうか。
刹那は知らないんだっけか。
「今日はバレンタインって言ってな。
好きな人に贈り物をしたりする日なんだよ」
と言っても俺のは一方通行だけどな。
「…………好きな、人…?」
自分へのケジメ。
はっきりさせてしまおう。
「ああ、俺は刹那が好きだ」
刹那は一瞬きょとんとし…
顔を再び真っ赤に染めた。
「……お前が、俺を?」
「ああ、そうだ」
「…………俺は」

「俺は、ロックオンに…なにも用意できて…ない…」
今度はちゃんと目を合わせる。
「……俺も、ロック…オンの、こと…が……」
刹那が、自分に。
必死に伝えようとしている。
「………すき…」
真剣に、真っ直ぐに見つめる瞳には、少し涙がにじんでいる。
「せ…つなっ」
思わず抱きしめる。
「ロックオ…」
刹那から、キス。
目をぎゅっとつむって、唇を押し当てる。
精一杯の、キス。
「……代わり」
プレゼントの用意が無いから、代わり。
「…そんな簡単に…可愛さばらまいてキスすんな、危ないから…」
「ロックオン、セイギョフノウ!フノウ!」
ハロが周りを飛び跳ねる。
「……ロックオンなら…良い…」
抱きつく腕に力が入る。
「どうなるか、わかんねーぞ?」
「…構わない」
確かに聞いたからな、その一言…!



こうして甘いバレンタインをそれぞれ過ごした。






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