Shortstory
□嘘も程々に…
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「あ、今日飯いらねぇから」
企むようにニヤニヤしながら仕事へ向かおうとするレナートが告げた。
「うん?今日何か用事でもあるの?」
朝食の食器を片付けながら晃がひょこっと顔を出す。
「う〜ん…久しぶりに『彼女』の所に寄ってこうかなって」
「はあぁっ!!??」
明らかに怒りを露わにした晃は、食らいつくようにレナートに責め寄る。
「…本気じゃねぇだろうな(怒)」
「さぁ…」
晃の反応が予想通りで、思わず笑みを浮かべながら頭を軽く撫でる。
いつもなら真っ赤になって俯く晃も、今日ばかりは納得いかないのか、パシッと手を払い退けキッチンへ戻ってしまう。
「馬鹿たレナート!!お前なんか帰ってくんなっ!!」
ベーッと舌を見せて怒る姿はまるで子どもの様で、レナートは思わず笑ってしまう。
「ボゥイはおとなしくお留守番だ。アンダスタン?」
パチリとウインクするレナートに、さっさと出ていけと晃はボールを投げつけた。
それを器用にかわして笑いながらレナートが出て行く。カシャンと小さな音を立ててボールはドアにぶつかると動きを止めた。
しかし、冷静になって考えてみる。
今日は何の日だ…?
「あ…4月1日――っ!!」
やられた!と思った時には遅かった。
それであんなにニヤニヤしていたのだ。
「帰ってきたら覚えとけよ…嫌いなもの尽くしの料理作ってやる!!」
怒りに顔を真っ赤にしながら、晃はレナートの嫌いな食べ物のリストを作り始めた。