Shortstory
□丸まる理由(ワケ)
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一緒に寝るようになって気付いたレナートの癖がある。
アイツはあんなにデカい図体してるくせに、寝る時は丸まって寝るんだ。
そう…例えるなら猫みたいに。
『丸まる理由(ワケ)』
「なぁ、どーしていつも丸まるんだよ?」
晃がお風呂から上がってくれば、レナートはダブルベッドの左側で丸くなっていた。
いい大人が丸くなっている様子は可愛くもあるが、どうせ広いベッドにいるなら伸び伸びと四肢を広げればいいのに…と晃はいつも思う。
まぁ、自分もベッドに入れば全身で抱きしめてくれるので、朝まで丸まる事はないんだけど…どうも1人だとこの格好になるみたいだ。
「レナートさ…どうしてもっとベッドを有効利用しないの?」
晃が頭を拭きながらそっとベッド端に座れば、フッとレナートの視線と絡まる。
「なぁ…知ってるか?」
丸まった体勢のままレナートが呟く。
「生き物が丸まって寝る理由は、脳に潜在意識で胎内の記憶があるかららしい…」
母親の胎内で育まれる期間の安心した体勢で、人はゆっくり眠れるのだと言う。
「レナ…1人でいる間が怖いのか?」
なんとなく…レナートは寂しいんだと思った。その時間を埋めてあげたくて、晃は目の前の恋人が急に愛しくなった。
「ワット?俺が…?」
その笑顔が少し頼りなかったから、晃は強引にグイグイとレナートの丸まった体の間に潜り込む。
「プリちゃん…!?」
珍しく大胆な行動に出た恋人にレナートはビックリする。
「ほら…抱きつけよ」
ぽそっと告げるとぐいっとレナートの両腕を自分に絡めて体を密着させる。
「知ってるか?丸まった隙間には…ちゃんとパートナーがぴったりはまるようになってんだよ。」
最愛の者から発せられるパートナーと言う甘くむず痒い響きに、レナートは心がじんわりと暖かくなるのを感じた。
「レナートが寂しいなら…1人でも堂々とベッドの真ん中で寝れるまで、抱きしめさせてあげるよ」
ぽそぽそと告げるその顔は、耳まで真っ赤で…
こんなにも愛されてるんだと思うと、レナートは少し強く晃を抱き締める。