Shortstory

□AM11:00
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「ねぇ…レナート起きてよぉー…」


甘い声が耳を掠める。

そっと目を開ければ、砂煙を含んだ風が白いカーテンと一緒に、真綿のような茶色い髪を揺らしている。


「ぁ――…今何時?」


「もうすぐお昼。もー本っ当に仕方ないなぁ」

寝ぼけ気味な声で答えたら、クスクスと笑いながら近寄ってきて寝癖付いてる、と俺の頭を撫でてくる。

そんな姿がたまらなく愛しくて…目を細める。

その瞬間、目の前の顔が一気に赤くなるのがわかった。


「ほ…ほら!!昼飯作るからさ、俺行くよ!!」


ぶっきらぼうに呟き、部屋を出ようとする彼の腕を掴み少しだけ強引にベッドに引き寄せる。


「うわあぁっ!?」


バランスを崩した彼は、いとも簡単に俺の腕の中に収まってしまう。


「ちょ…レナ…っ、離してよ!!」


簡単に捕まったのがよほど悔しいのか、真っ赤になってジタバタと腕の中でもがく。


ホルシードの気温のせいで汗ばんでいる体が、くっついた瞬間に熱を発散して一瞬だけヒヤリとする。

この感触が心地良い。


「レナート…くっついてたら余計に暑い」

眉間に皺を寄せて暑い暑いと訴えるが、気にせず更に抱き締める。

「人の話聞いてる?」

俺はプリプリと怒る彼の唇をそっと指で押さえて頭を撫でる。

「晃…もう少し…もう少しだけ」


こうしていて?と低く呟くとピタリと抵抗する手が止んだ。

「晃…?」


「少しだけ、だからな…っ!!」


よく見ると耳まで真っ赤にして、必死に顔を見られまいと俯いたまま俺に抱きついてくる。

そんな姿がたまらなく愛しくて、そっと抱き締める。

「サンキュー晃…」

耳元で囁き、赤い耳にちゅっとキスを落とせば、腕の中の体がピクンと跳ねる。


「レナートはずるい…そうやって俺を動けなくするんだ」

くっついたままゴニョゴニョと晃が愚痴る。

「ハニー、こっち向いて?」

「ハニーって言うな…」

優しく頭を撫でれば、文句を言いつつも素直に黒い瞳が真っ直ぐ見つめてくる。


「晃…愛してるよ。こんなにもお前が愛しい。これからもずっと俺の側で笑ってくれ」

言いながら髪…額…頬…鼻と優しく口付けを落とす。


「キザなやつ…」


そう憎まれ口を言いながらも決して嫌がらない。

まったく素直じゃないんだ。


「ソーリー」

そう言って唇に触れないまま起き上がれば、少し寂しそうな顔で見上げられる。
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