戯言仮
□ラストシーン
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夜が明けるちょっと前
歩道橋の下の公衆電話で
空が白んでて、月も白くて
藍が薄くなっていく
線路沿いの花は始発電車から巻き起こる風に揺られる
梅雨が明けたばかりだから、蒸し暑くて
いくらかけても出ない君に、どんな感情を抱いているのだろう
君が返事をしてくれることで何かが変わればと願ったり
10円玉が落ちてくる音と溜息だけが聞こえて
花は、自分から揺れだし、花弁を散らす
電車の中にはあまり人がいなくて
ただ、走ってるだけの金属なわけで、
誰のためでもなく、ただ
君の声が黄緑色の中から聞こえても、
黄緑色が壊れてて、ノイズがかかる
中の君は酷く不機嫌で
僕は何も出来ず
進展のない会話だけが進んでいく
近くの遮断機が鳴りだし、
花が揺れ動き
公衆電話を切ると、視界は明るくなっていて
日は出てないが
空が、澄んでいた