戯言仮
□裏切りの包括的内容
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あるところに、とても大きい王国がありました。だけど、国民は全員、王様が嫌いでした。
「王はお前の娘を誘拐した」
「王がいるからみんな貧しくなっていった」
どこからともなくそんな噂が流れ、たちまち、王様への信頼は底をつきました。
みんなから信頼されない彼等は何も出来なくなり、最後は牢屋にいれられてしまいました。
そして、国民代表の青年が王様を殺しました。
だけど王様がいなくなってもちっとも物が売れません。
小麦も暑さのおかげで、全部ダメになってしまいました。
おかしい、これはおかしい
最初に言い出したのは王様を殺した青年でした。
そして青年は考えました。
本当に王様が原因だったのか
とりあえず、今、国を治めている元大臣に聞いてみました。
「王様は悪魔だ」
彼は、それしか言いませんでした。
だけど、目がうろついています。
突然、元大臣は青年に命令しました。
「王様には恋人がいた。でも、王様の恋人だから悪魔の手先に違いない。殺してこい」
一方的に言われた青年は無理矢理、剣を握らされ、行かなければ殺すと言われました。
そして青年は今、一人の女の人の前に立っています。
「僕はホントの事が知りたい。君の大切な人は悪魔だったのかい?」
彼女は直ぐさま否定しました。
「王はそんな人じゃない。彼は国民を愛してた。彼はちゃんと人を愛せる人だった。だって、彼の夢は国民、いや世界の人が幸福になること…だった。」
とても哀しい目をしてました。
「じゃ、悪魔だと言ったのは誰だい?」
「……元大臣。王が何日も寝ずに国民のためを思って作った法律案も、あっさり否決した。議会はあの時点で乗っとられていた。裏切られたんだ。」
青年は考えました。彼女の事が本当だったら、僕はなんという罪を犯してしまったのだろう。罪悪感が急に湧き出てきました。
『悪魔の手先を殺せ』
元大臣の声が頭の中に響きます。
僕に出来る事は何?
青年は剣を抜き、彼女に振り下ろしました。
でも、切ったのは彼女の腕の手錠でした。
「逃げよう。ここにいても追っ手がくる。遠くへ、遠くへ、誰もいないとこに…」
彼女はするりと立ち上がり、青年について行きました。
元大臣は殺されました。
殺したのは、彼の秘書でした。
そして、秘書が国を治めました。
だけど、秘書も殺されました。
大富豪に。
大富豪も殺されました。
そんなのがずっと、循環して、国は無くなりました。
その荒れ果てた国に、男女が来たのはまた別の話。