戯言仮2

□名無しの1
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どうやら詰んだようだ。

この一週間、余計な事は全く考えずに唯々仕事に打ち込んでみた。それは思ったより早く過ぎて行き、私はいつの間にか東京に帰ってきたりしていた。夕方の午前4時、調度海とは反対側に太陽が沈んでいく頃。重いバックを肩から掛けて、モノレールに乗っていた。トンネルに入り、開けた場所は工業地帯。そこの夕陽があまりに綺麗過ぎたのが原因だったのであろうと予測してみる。フラフラと座っていた席を立ち、お土産に買った紅茶のチーズケーキを忘れそうになるが、車内に置いていく事はなかった。



そこは大きな橋だった。先には何棟も連なる団地、後ろには競馬場。汚い運河が煌めいた気がしたのは、頭が感傷という液にどっぷりと浸かってしまっているに違いない。遠くで歌が聞こえる。あの団地の中の小学校か。幼過ぎる声はそのまま遥か彼方に飛んで逝きそう。


チーズケーキとバックを地面に置き、下の運河を眺めても夕陽のお陰でキラキラ輝いている。その事に無性に腹が立ち、足元に生えていたタンポポを引き契り、投げ込んだ。ゆらゆらと行く場所もなく落ちていく様は何処かの誰かにそっくりだ。




嗚呼、行き止まりだ。
私は団地に背を向け、モノレールのホームに向かう。背中が重く、上手く体が動かないが、何とかホームに上がった。待っている人は誰もいない。疲れたんだ、すぐそこにベンチがあるのに、何故か、そこでしゃがみ込む。飛行機のライトが見えた。辺りは徐々に暗くなっていき、橋を通るトラックのライトに目をつむる。
ほんのすこしだけ、ないた。







車両には空港からの客が沢山乗っていた。チーズケーキが潰れないように上手く、乗る。まるで星のようなライトが東京を照らす。



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