戯言仮2

□元素
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まぁ僕の彼女は化学が好きらしい。家には沢山の本があるし、友達と共に爆弾を作っては河原で爆発等をやらかして警察沙汰になったり。でもそんな彼女は大学に進学しても理学部ではなかった。
「何で文学部なの」
「お金がないから」
今でもどんどん本は増え続けているわけで、この前適当に一冊掴んだら「眠れない家族」という題名の本があった。FFIとか優性突然変異とか、学力のない僕にはあまり解る内容ではない。

そんな彼女がいきなりこんな話をし出した。
「ほら一酸化炭素は寂しくて血液中の酸素を取っちゃうんだよね。よく聞くでしょ、一酸化炭素中毒。二酸化炭素はCが一個にOが二個、別に何でもない気体だよね、コーラにも三矢サイダーにも入ってるわけだ。他にはお水。Hが二個にOが一個。でもなによ、Oが一つ抜けたぐらいで人体に深刻な影響を与える悪魔になっちゃう。Oが一つ増えたぐらいで、過酸化水素っていって飲んだら大変な物になる。飽くまで人間主体の考えだけど。元素は不思議だね。結合する相手によって良かったり牙を向いたり忙しい。まるで人間だ。いや、リンみたいに同素体だってあるんだからね。赤とか黄とか黒とか」
其の話を半分理解できたかと問われれば答えは微妙だ。リンって何なんだ、同素体って食えるのか。それでも一酸化炭素中毒は知っていた。バイト先で僕が入っていない時に、フライヤーで不完全燃焼が起こり、何人かが倒れたらしい。取り敢えず一酸化炭素は危険だという知識だけ身についた。
「細かく別ければ、地球上の物体は全て元素が最小単位だ。勿論、君も私も。元素がまるで人間の様なのか、それとも、人間が元素の様なのか。ほらこの前の炭素だって水素だって酸素だって私の体を作ってる」
「じゃあ僕等は」
「水素結合で宜しくお願いします」




元素が世界を作ってる。元素が思考を作ってる。元素が愛を作ってる。彼女の持論だ。





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