戯言仮2
□せいへき
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「お邪魔します」
「どうぞどうぞ、邪魔してください」
女は困惑していた。ある男の家に招かれた事までは何等問題はないのだが、実は人の家に仕事以外で来たのは中学生以来なのだ。仕事だと別のスイッチが入るので"裸"でなくとも平気だが、今回は違う。本当にプライベートで呼ばれてしまった。
しかし、此処で脱ぐのも変だなとは思うし、第一此処は男の部屋だ。八割の可能性で押し倒されるだろう。彼女自身もそれほど性行為というものが好きではないので、それは出来れば避けたい事柄だ。だが、やはり服は落ち着かない。シャツとブラジャーなんて外して早く解放されたい!その代償として事に及ばなければならない。素直に言えば彼はわかってくれるのだろうか。
取り敢えず男に付いてきて、リビングに出た。女の部屋とは大違いで、沢山本やCDがあるくせに綺麗に収納されている。男が女のコートを架けてくれた。
「あの、さ」
「何?コーヒー煎れてくるけぇ、待っとれ」
カーキ色のソファーの右端に座り、男が帰ってくるのを待った。やはり駄目だろうか。このズボンだってパンツだって何時も履いていないから、きつくてきつくて堪らない。妙にソワソワしてしまい辺りを見回してみる。嗚呼、もうすぐ彼が戻って来てしまう。
「あれ、脱がなくてええの?平気?」
それを聞いた時、抱き着いてやろうかと思った。
もう嬉しくて嬉しくて。この奇妙な性癖をこの男は理解してくれているとわかると何とも頼もしい事か。
「脱いだら襲われると思ってな」
「今は発情期じゃないんよ。大丈夫」
これで思いっきり脱いで裸になれる。
『刑事と裸族』
「やっぱり、家鴨は大好き」
「何それ、愛の告白?」
「死ね新藤」