戯言仮2

□神様二人
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「よう、太陽」
「あら、こんにちは、お月様」





二人は久しぶりに会ったのにも関わらず、一緒に高層ビルの屋上のベンチに座ってるだけ。

太陽と呼ばれた女性は短髪で、Tシャツにジーパン
月と呼ばれた男性は長い髪を後ろで束ね、コートを着込んでいる。


「夜はいいよ。お前も夜に住めばいいのに」
「おあいにくさま、父から決められてるじゃない。今から変えるのも面倒だし」


暗い夜になり、またすぐに明るい昼。それが永遠繰り返されている。太陽が昇ったり、月が昇ったり




「お月さん、暑くないの?」
太陽が、彼のコートやマフラー、手袋を順に指差した。黒と白が基調の物
「てか、太陽は寒くないのか?」
全然っと手を振り、太陽は自分のTシャツを見た。そして、裾を引っ張る



雲が流れる。雨が降る。二人は傘を差す。雪が降る。二人は傘を閉じる


「太陽さん、太陽隠れちゃったよ」
「月くん、月が隠れてる」


慌てるわけでもなく、太陽は黒い携帯、月は白い携帯で誰かに電話をかける


「ちょっと、雲頭、何私を隠してるのよ」
「梅雨?もうそんな時期。夏って僕がよく見えない季節なのに」

『おめぇら、うっせぇ。雲は適当なんだよ』

誰かが怒鳴る声が、両方の機械から聞こえて来た




二人は同時にパタンと携帯を閉めると、ベンチから立ち上がる
二人は屋上の手摺りから乗り出した
眼下には沢山の人間が、世話しなく動いている。悲しみや楽しさ、全部があった


「月さん、見て見て。もう長袖着てるよ」
「銀杏が色づいてるの見てわかるだろ。秋だよ、太陽」
「あれ、さっきまで梅雨だったじゃん」
「夏、過ぎたね。太陽の活躍の季節だったのに」

余裕そうに笑う月を太陽が平手打ちする。でもその顔は二人とも笑っていた


「また、直ぐに来るし」
「見てよ、今、僕綺麗」

天頂に上がる大きな月を見て、月は叫んだ
太陽は珍しく否定しないで「そうね、綺麗」としみじみ言った






ビルの中から、ジングルベルの曲が鳴り始める
そして、真っ白い女の子が二人の後ろにいた

「あっ、あの…」
「あら、雪ちゃん」
「僕ら邪魔?」

月がそういうと、遠慮がちに雪は頷く
二人は雪にベンチを譲り、後ろに立った

「雪降って来たよ、太陽」
「そこに雪ちゃんがいるんだもん、当たり前よ」

少しすると、雪は「あっ、ありがとうございました!」とビルから飛び降りた

「…よくやるよ」

また月が下を覗いた





太陽は手元の携帯で日時を確認する


「あと、直ぐで新年よ」
「ホントだ、だから人間はずっと動いてるのか」



1番最後の月が昇って、1番最初の太陽が昇る。いつも通りのことには変わりはない


「太陽、あんた綺麗だな」
「月からそんなこと言われるとは思ってなかった」
「じゃ今年もヨロシク、天照」
「去年はお疲れ、月読」




また太陽が沈んで、空が煌めき始める

「「久しぶり」」




また一年が始まった



(〜20090126、拍手)


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