戯言仮2
□オリオン座
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東京で、オリオン座を見た
俺が知っている星座はオリオン座だけだ。唯一、子供の時に覚えた少ない星達。人の形らしいが、俺に言わせれば砂時計に見える。上に二つ、真ん中に三つ、下に二つ
「お疲れ様ですっ」
「お疲れ」
ふと上を見ると、夥しい星の数。ビルの明かりに負けじと必死に光っている
天の川なんてレベルじゃない。空一面が天の川状態。一つ一つの星が埋もれていた
その中で見つけた唯一の星座、オリオン。他にもたくさんあるんだろうけど、俺はこれしか知らない
大群の隅の方に光っているオリオンは存在感が大きく、一際輝いているように見えたり
さっきお疲れ様と言われたのに事務所に戻り、屋上に階段で駆け上がる。不思議そうにこちらを振り返る同僚も無視。寒い、寒い、寒い。流石に冬なだけあって、体にたたき付ける風が冷たい
「……綺麗」
真下の道路の信号が青に変わった
吐く息と煙草の煙は白く、上にゆらゆらと昇って消えた
どっと力が抜けて、フェンスにもたれ掛かる。フェンスが鈍い悲鳴をあげた
手がかじかんで来たのでポケットに手を突っ込んで、目を閉じてみる。聞こえてきたのは、どこかで銃を撃ち合う乾いた音と、クラクションを連打する煩い音
目を開けると、星はなくて
視線の先にはお前がいた
消え失せた星は、お前になった