戯言仮2
□Puer natus in Bethlehem
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Puer natus in Bethlehem
彼女が、クリスマスは教会で過ごしたいといいだした
別に僕自身がキリスト教に興味があるわけじゃないんだけど
そう、ただ神父さんのお話を黙って聞いているだけ。なかなかそのお話はちゃんと聞いていると面白い。イエス・キリストが生まれた経緯についてのお話だった
隣に座ってじぃっと神父さんの後ろにある十字架を見ている彼女は実際、この神父さんのお話は聞いていないのかもしれない
きっとあれだ、このクリスマスの教会の雰囲気が好きなんだ
ぞくぞくと人が入ってきている。この人たちも大部分が無宗教なんだろう。言ってる僕たちもキリスト教じゃない、しいて言えば仏教
入り口のほうからシスターがやってきた。何か揺らめくものをお盆にのせて
キャンドルが配られる。紅いキャンドルが僕の手の中でゆらゆらと火が燃えていた
「・・綺麗」
どうやら隣の彼女がこのキャンドルに惚れてしまったようだ
東京のイルミネーションがステンドグラスを飾る
僕は何を神様にお願いしようかな
君は何を神様にお願いするのかな
アーメン
両手を重ねる
目をつぶったら真っ暗になった
神なんて実態がないのに、どうして僕らは信じることができるのか
ずっと目を瞑っていたら、何かが聞こえてきた
聖歌隊が聞いたことのある聖歌を歌う
Puer natus in Bethlehem[幼な子はベツレヘムに生まれぬ]。後で彼女に教えて貰った。日本語ではなかったから、内容はよくわからないが、題名からして今日のお話と大体同じだろう
パイプオルガンが鳴り出す
謳う
オレンジ色の光が見える。星が輝いた気がした
ミサが終わり教会の外に出ると、雪が降ってた
彼女はこれを「神様からの贈り物だ!!」なんて子供のようにはしゃいでいたけど
僕も密かに感じたのは、否めない
「また来たい」
そう呟くと、彼女は驚いたように僕を見上げた
「いいよ、また来ようね」
一年後も、僕らが繋がっていますように
二人でここに来れますように