戯言仮2

□Siren
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夢の中で、少女は電車に乗っていました。席は埋まっており、疎らに人がたっている状態で、少女も進行方向右側を向いて立っていました
何も起こるわけでもなく本当に立っているだけで、外から見たらロボットのような芸術的無表情でしょう。それはいつかみたバンドのヴォーカルのアーティスト写真のようでした



突然、少女の右耳に'リーン、リーン'とあの目覚まし時計の音が、遠くに聞こえました。小さい音ながらしっかりと自己主張をしていて、少女の耳から離れることはありませんでした








"リーン、リーン"








少女は目を覚ましました。見知らぬ部屋、見知らぬ人間、見知らぬ布団、見知らぬ私。全てが変わっていました

そうだ、昨日家に帰ったら風邪っぽかったんだ

見知らぬ人間達は少女を観察していました。それはもうあのロボットのようなヴォーカルのように、無表情でボードに書き込んでいくのです

不治の病。少女はなんとなくわかりました。きっとこの病気は若い人をどんどん殺していくのだろう。人間は生まれなくなってしまうのだろうと。私はその最初の患者で、今も病は拡大していっているのだろうと

少女には夢がありました。少女は自分で自分の希望を潰しました。夢は叶わない、私はもうすぐ死んでいく。無作為に選ばれた私は不幸だっただけ。少女は見知らぬ人間に見られているのに耐えるため、目をつむりました









少女は夢を見ました。また電車の中で、少女の乗っている車両には5人しかいませんでした



一人はゲームをやっていて、何かに勝ったのでしょうか、楽しそうな表情を

一人は本を読んでいて、悲しみのあまり、開いている頁に池を作っていました

一人は缶ビールを片手にスポーツ新聞を隣の座席に広げ、新聞紙を空いてる拳でひたすら殴り

一人は誰かのウェディング姿が写った写真を見ながら音楽を聴き、朗らかに外を見上げてました

一人は背筋を伸ばし、虚ろな目でどこかに焦点を合わせているだけでした



少女は上手く合わないピントを窓の外に合わせようと、無表情ながら努力しました。調度、河原の土手を渡っているところで、鉄橋の真下には、赤い彼岸花が怖いくらいに咲き乱れてました








"リーン、リーン"








今日も誰かの着信音が電車の中で響き渡るでしょう







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