猥褻写真ばんど

□代わりでいいから
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私は貴方の女

でも

貴方は私の男ではなかった






『代わりでいいから』







「今日は帰らなくていいんですか?」

「ん?今日は…いいや。奥さんと喧嘩したん」

貴方が一生愛すと誓った人は、これを知ってるのかな

何でもない、ただのキャバクラ

そんな所に、夫が入り浸っているのを知ってるのかな





「今日、わしの誕生日じゃけ、みんな勝手に頼んでええから」

その言葉に周りが沸く

違うテーブルから、ドンペリを頼む声が聞こえた

『ドンペリ、ドンペリ、ドンペリ』

たかがシャンパン、されどシャンパン

私は彼に、同じことを促す

「岡野さん〜、私も、ドンペリ飲みたいなぁ」

若干上目使い

彼はニコっと笑い、一気に何本か頼んだ

今ので景気づいたのか、色んなテーブルから、高額な物が頼まれ始めた

今日の店の売り上げは半端ないんだろうなと、どうでもいいことを考えながら、ピンクのシャンパンをグラスに注ぐ






彼の横顔はいつも淋しそうだ

大概こういう店に来る客は、何かを潤したくて来るのだが、きっと彼も例外ではない

いつも心此処に在らず

だけど、そんな彼に、私は恋をした

私は機械じゃなくて、人間だ

人を好きになることぐらい、あったっていいじゃないか

まさにそれだった

何回か指名を受けているうちに、彼の隣に居たいという独占欲が生まれた

叶わぬ願いだってわかっている

キャバクラ嬢だって、客と同じく、此処で夢を見ているのだ




いくら指名を受けたって、所詮私は上まで行って、二番手

トップとの格差は大きい







「ハッピーバースデー!!」

店からのサービスで、ケーキが運ばれてきた。お得意さん限定だ

一回で蝋燭の火を消せなかった彼は、四回目で全てを消した

ヘルプで来た子が、ケーキを皿に取り分ける

それを美味しそうに食べる彼を見ながら、私は無躾な質問を

「今日は帰らなくていいんですか?」

いったん、口に運ぶ作業を止め、どこかを見ながら彼は言った

「ん?今日は…いいや。奥さんと喧嘩したん」

そう、それなら貴方と少しでも長くいられると考えた自分に罪悪感を感じた

でもしょうがないじゃない、好きなんだから

「あら、そうなんですか…じゃ、今日は沢山飲んで、忘れちゃいましょ!!」

さっき頼んだドンペリをさらに注いだ







忘れちゃいましょ

それで、貴方の気持ちが晴れるなら、

それで、私が少しでも役に立てるなら

所詮、私は彼の奥さんの代わり

でも、それでいいの

それが、いいの


私が彼の頭の中のどこかに存在してれば、いいの

夢は覚めちゃうんだから

私が覚めてても、彼には少しでも長く夢を見させてあげたい





私は奥さんの代わり

それ以上のそれ以下でもないのだから







→後書き

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