戯言仮2

□素〜三崎口編〜
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「お前、ガムテとか、買ってこい」

「…先生、お腹痛いです」

「いいから行け」




〜三崎口編〜





そんなことを言われとぼとぼと海沿いを歩く

汚くもないが綺麗でもない、結局は沖縄には敵いっこない三浦の海は今日も穏やか

打ち上げられた魚は腐っていて、骨が見えていた

こんな感じ



学校の買い出しのため制服はちゃんと着るが

本当はジャージのままで行ったほうが近いのに、明らかに着替える時間がロスしてる



天気は快晴。残暑は終わり、秋の風は吹いているが、照り付ける太陽はまだ元気だった


いいことねぇなぁ


そんな気持ちで、空を見上げる







「2687円です」

レジの店員が機械的に言った

千円札を三枚払い、お釣りを受け取り、に入れてもらう



中には工作用具だけではなく、私が独断で決めたお菓子なども入っていた

失敗した…

余計に袋が重くなってしまった

ただでさえ、両手は塞がっているというのに

ほら、いいことない







しかし、私の勘は外れる

憂鬱に店から出ると、青い空の下に誰かいた

「よっ」

彼は片手を上げながらそう言う

「なんで、お前がここにいるの?今日学校休んだっけ?」

酷いっと胸を押さえるようなジェスチャー

そして私の袋を一個奪い取ると、せかせかと歩き出してしまった

「何?持ってくれんの?いつからそんな優しくなったんだよ」

口からは素直に感謝の言葉が出なかった

「ばーか、違うから。先生からの命令。覚えとけ。てかさ、お菓子ない?」

彼の場合、本当に先生から命令されて来たのだろう

私の袋の中にあったスナックを彼に目掛けて投げ付けた

「お前、これ開いてないじゃっ……ああ!!」

袋を落としたようで、スズランテープが私の足元を転がった

「何やってんだよ。早く拾え拾え」

「お前が投げ付けるのが悪いんだろ」


あれ、あれあれ、私の予想が外れた

案外、悪いことじゃなかった





車が走らない海沿いの道に響いた小さな声は波が打つ音と、バラバラと物が落ちる音ど消された



「なんでもいいけど、ありがと」



それが精一杯












「男なら、重い方持てよ」

「俺、ニートだから嫌だ」

「学校来てるならニートじゃねぇよ」

「なら、仮性ニートで」

「意味わかんね」



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