戯言仮
□片〜東扇島編〜
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石油コンビナートと製鉄所
西と東、どっちにする?
片〜東扇島編〜
「好きな方でいいよ」
お前はニコニコしながら答えた
そういうのが1番困る。俺はお前の判断を仰いでるのに
頭上には羽田空港
窓にぴったり張り付いて、上を見ている
残念だな。飛行機はここからじゃ見えない。何事も近すぎると何も見えねぇんだ
そしてオレンジ色の中に
周りの車達が俺を抜き始めた
「窓から手とか出すなよ」
アクセルを強く踏んだ。こんなに馬力凄かったっけと思いながら誰かの車を追い抜く
やけに料金をぼったくるアクアラインを横目に、そのまま
「で、どっち?」
「なぁにが?」
「じゃあ、東と西。どっちが好き?」
「西」
始めから言ってほしかった
「うーん!」
大きく背伸びしてるお前は、どこまでいっても小さい
手摺りから乗り出すと海に落ちるぞ。その場合助けてやりたいが恐らく不可能
「何あれ〜」
指差す場所は橙の光に包まれている
「製鉄所。鉄作ってるとこ」
「そんくらいわかってるよ」
人工的に創られたこの緑と、人為的に造られたあの金属
白くてどっかに飛んでいきそうなお前と、よごれが滲み出てる俺と
、
「、なぁ」
「今度はなぁに?」
ほら、手から無くなりそう。掴めなくなりそう
お前が余りにも「西」と答えるのが遅かったから、無駄に緊張してた
無くなる前に、掴んでしまえ
「あのさ、
結婚してくれねぇ?」
唐突過ぎたかもしれない。顔が驚く前にフリーズしてる
「……公園で、プロポーズされるなんて思ってなかった…
でも、結婚は喜んで!」
最後の最後まで緊張しぱなっしだった
東公園に行くならプロポーズしないけど、西公園に行くならプロポーズするって頭の中で決めてあったから…