戯言仮

□捨〜新宿編〜
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何でこんな時に限って

天気予報が外れるのか


空を睨んでも、落ちてくるのは水だけ




〜新宿編〜





さっき、別れの交渉を、住友ビルの何十階かで行ってきた

彼と離れるということは、わかってたのに

いざとなったら、私はダメな女ね

だから合コンでもいつも失敗するのよ

「行かないでっ」

最後に発せたのはそいつだけ

あなたはこちらも見ずに灰皿に煙草を押し付け、行ってしまった

もちろん、会計は私よ

彼の香水だけ、私の周りを漂っていた





でも、最後のあなたの残り香も、これで真っ白

外に出ると、土砂降りの雨

何よ、これ

バッグを漁って、折りたたみ傘を捜すが、出て来るのはアドレスをまだ消去出来てない飾り気のない携帯と、生理用品だけ

革のバッグは水に濡れちゃ、ダメなのよ!!

猛スピードで中野方面に飛ばす車も、都庁の無駄な明かりも、

私の心に、干渉はできない



こんな携帯いらない

黒いプラスチックを地面に叩きつけ、

赤いパンストを脱いで、左手で持った



西新宿なら、信号を渡ってすぐ

だけど

都庁を背に、走り出す



明かりから逃げるように、車の反対方向に

ワンピースなんて、元々の意味をなしてない

ピッタリ私に張り付いちゃって

せっかくセットした髪もぺちゃんこ


雨が視界を奪っていく

ただ走る


足は走るための道具

飾らなくたっていいじゃない




そういえば、天気予報は外れてない

ちゃんと傘を持っとけと、朝言ってたじゃないか



あんたに会う事だけが、全て

だけど、もう終わり




駅も構わず走り抜ける

誰がどう私を見ようと、私は私だ




進行方向は途中で左に

明かりが、ネオンが欲しかった




雨はまだ、降り続けてる

信号で止まり、見上げ、睨む


空に睨み返された







誰でもいい

、慰めて

パンストは履いてないし、消えない携帯も捨てた

私の名前も知らない

何もないでしょ



いいから、

慰めてよ









そこは、人の欲で、雨を反射する









結局、天気予報通り昼まで雨は続いてた



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