戯言仮

□ネジと時間と女
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昔、ただ時計のネジを戻している女の人がいた

彼女は何か手が空くと、自分の懐中時計を回していた


ずっと、ずっと








ある日、彼女の家に、若い男が来た

「僕の時計を回してくれませんか?」と、腕時計を彼女に渡す
彼の手には花束があった



女の人は嫌な顔せず、三日ほど、ネジを戻す







そうしたら、もう一人、客が来た

髪の長い綺麗な人が彼を捜しに来たらしい

彼は綺麗な人に何か言い、結局二人は手を繋いで帰った










違う日、黒い大きな車に乗り、お付きの人を何人も従えている、初老の男性が来た

「会社の時計を戻してくれんかの?」と言って、何百もある時計を彼女に渡す

近くの机には勝手にパソコンが置かれていた



彼女は嫌な顔をせず、13日ほど、ネジを巻く












あるお付きの人が叫んだ。彼女以外、全員パソコンを覗き込む

初老の男性は満足した顔つきで、彼女に札束を与えた


でも、彼女は受け取らず、会社の壁時計を全てもらった











彼女の家から、時を刻む音は消えた事がない

女の人は一日中、全ての時計のネジを戻して続けた



ある日、時計の音が失くなった




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