戯言仮

□あなたに出会った日
1ページ/1ページ




外に出ると暗かった


見上げると雲が厚かった






あなたに出会った日







夕食前、散歩がてらに、土手に行った


そうしたら、夏特有の夕立が来た


傘を持ってない私はびしょ濡れ


たまには、雨にあたるのもいいかと、散歩続行






土手の上は道路と隣り合わせで、猛スピードを出して車が通る


そのお陰で私の服に水が飛び散るというのに


その前にスコールで濡れてるから関係ないけど






冷たい、気持ちいい


途中でサンダルを脱ぎ、裸足でコンクリートで舗装された土手を歩く


草の中にはたくさん虫がいて、雨宿りをしている


川には鴨が悠々と泳いでいた


こいつらは風邪をひかないのか?






橋の下に住んでいる人達に会釈


ちょうど上には電車が橋を渡っている最中だった


物凄い音を起てて、川を渡ってすぐにある駅を目指して走っている


あの駅は賑やかだからな


周りにビルやマンションをたくさん建てて何をしているんだか


明かりが、綺麗だった






ぴちゃぴちゃ


絶えず私の服や髪から落ちる水滴


ぺたぺた


私が歩くことをやめなければ鳴り続ける足音






枝?


コンクリートの真ん中で見つけた物


茶色で10cm前後の棒


近づいてよく見てみると


蚯蚓(ミミズ)だった




普通の3倍くらい太くて、伸縮を繰り返しながら動いてる


観察してみると、こいつは面白く


足で転がすと小さくなり、ちょっと経ったら、また草むらの方に進んでいく






そういうふうに観察してるため、私はしゃがんでいた


すると、私にだけ雨が降ってなかった


見上げると若いサラリーマンらしき人が


傘を私に傾けている






「風邪ひきますよ」






別に傘がないほど貧しいのではなく、寧ろ、自分から手放したというのに


何故か、嬉しかった






「どうも、でも、もう要りませんよ」






彼は傘を閉じ、私は立った


雲は無くて、太陽が眩しくて、蚯蚓もいなくて、






電車が大橋を渡る音が遠くに聞こえるだけ













「寒い」

「ほら、やっぱ風邪ひいてるじゃないですか、家近くなんで寄ってってくださいよ」




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ