戯言仮2

□オレンジフラペチーノ
1ページ/1ページ





ジュー、しゃり、ジュー、しゃり




小さな氷が口の中で踊るの。ほのかなオレンジを漂わせて蜂蜜は何かを捕まえたわ。時折入ってくるシナモンがいい感じ

「やぁ、元気かい」
「あんたも元気なのか、そんな青白い顔で」
男はいつも通り紺色のPコートを着て、女はいつも通り何も纏わないで水が張ってない湯舟でフラペチーノを飲んでいる

「いい加減、服着てくんない?目のやり場に困る」
男にしちゃ高い声を出し、茶色のフワフワの髪を揺らして、その女とは反対の方向を向く
女は適当にあしらい、フラペチーノから口を離した
「これ、美味いんだよね。わざわざあいつに買わせに行ったかいがあったちゅうもんよ」
「って事はさっき鈴木はここにいたの?、」
「そう、買ってきてもらうと言えば腹黒くんしかいないでしょ」
「あー、わしも飲んだよ。新作じゃろ…シナモンなんて入ってたっけ?」
「シナモン好きだから、たくさん入れてきてもらった」
ホイップの上のシナモンだけを吸うように、ストローを這わせる女を見て、男は今日の用事を思い出した。肩掛けの鞄から一枚の紙を出す
「この会社の前社長が今何やっとるか、教えてほしいんじゃけど」
もしかしたら死んでたり、なんて男の家鴨口が言った。プリントに目の釣り上がった狐男が、細い目更に細くしてカメラを睨んでる写真がある。女も目を細くして、写真を見る
「んー、死んじゃいないよ。ただ死にそうなんじゃない?」
「じゃ、何処なん。何処にいるんよ」
女は悪戯にプリントに向けて気を送る真似をしては「エスパー…」と呟く。男は呆れて携帯を弄り始めた
「ねぇ、まだなん?」
「焦るな、家鴨」
「わしの名前は新藤!」
「…教えてほしい?」
にたぁと意地悪そうに口を横に広げて、飲みかけのフラペチーノのストローをまたくわえる
「教えてくれんと、上にキレられる」
「家鴨が?」
「わしが」
しゃーないと言って女は湯舟から出る。そのまま裸のままでリビングまで行き、棚を漁り始めた。男はリビングに入ろうとすると怒られるのはわかっているので、ただリビングの前のドアの前で待っていた
数分後、リビングで「あった!!」と言う声が聞こえて男は安心する
「可哀相なしんどっ、いや家鴨くんのために教えてあげるが、後できっちり請求しますよー」
「言い直さなくていいんに、馬鹿」
「馬鹿ぁ?じゃ、教えない」
「すいませんでした!!」
女はそんな男を見てケラケラ笑った。そして「いいか、紙はあげないよ。頭で覚えな」と言って、狐男の居場所を男に教えてあげていた
「言うの、早い!もうちょっと遅く」
「いーやーよー」

また湯舟に戻った女は体育座りをして、本を読み始めた。それを男は確認して、外に出ようとするが
「…のぉ、寒くないん?冬なのに裸でフラペチーノ」
「別に」
「あっ、そう」
男は自分のしていたマフラーを女の顔面に投げ付け「さらばー」と言って外に出ていく
「………ばーか家鴨」
無駄に自分の首をぐるぐる巻きにした女はまた、フラペチーノのストローを噛んで、本を読み出す




ジュー、しゃり、ジュー、しゃり






[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ