BLEACH

□Over And Over
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これが最後だと、分かっていた。


  Over And Over


緩やかに、けれど確かに近づいてくるものがある。

何を伝えるべきなのか、何を口にしてはいけないのか。
考える前に心が、まっすぐあなたに手を伸ばす。


「妹を…」

こんなことを言っては駄目だと、分かっていたはずなのに。
優しいこの人を縛り付けてしまうだけ、わたしが生きて、償うべきだった。

出来るならこの願いを、私の愚かさが招いた後悔を、あなたに残したくなかった。
そう思うのに、私はまたあなたに甘えようとしている。

私はなにひとつ、あなたにしてあげる事が出来なかったのに。

「…最後まで、わがままばかりでごめんなさい…」
傍にいることを望んでくれたあなたの、その望みすら叶えてあげられない。

あなたの願いは、いつだって何だって、そのまま私の願いだったのに。


「…ごめんなさい」
先に逝くこと、何もできなかったこと、私の罪をあなたに背負わせること。

…そして今、あなたのこんなに辛そうな顔を見ているのに…穏やかな気持ちで、眠ろうとしていること。

握られた手に、ぎゅっと力がこもる。
いつでも私に、確かな愛をくれたひと。


「…白哉様と過ごしたこの5年…緋真は、夢のようでございました…」

身にあまる幸福に包まれて、あなたの温もりを手の平に感じて…こんな幸せ、まるで本当に夢のよう―――。



―――このひとがいとしい。

神様がもしもいるなら、この想いをどうか彼に残して。



愛しています。

愛しています。


何度でも、心から。

言葉にしたら溢れて、零れてしまいそうなほど。



―――深い藍色の、あなたの瞳が霞んでゆく。

梅の香りももう、届かない。

あなたの手を握り返すことも出来ず、どこにも力が入らない。

ただ、力強く私の手を包む、大きな手を感じるだけ。



「白哉さま…」


―――― ひ さ な


あなたの頬をすべり落ちたひとしずく。

わたしの名前の形に動いたくちびる。


―――全てを胸に、しまってゆきます。





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