BLEACH
□Over And Over
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…―――緋真。
揺り起こせば、また柔らかなすみれ色の瞳が瞬きそうで、白哉はじっと、握りしめた手を離せずにいた。
このままここで、自分も深い眠りにつけたなら。
緋真のいない世界を感じるより前に、同じように眠ってしまえたら。
緋真、と彼女の名を呼ぶ呟きは、声にもならない。
私はお前に、何をしてやれたのだろう。
私の世界に色をつけた、温もりをくれた、優しいお前に。
私がもし、まだお前にしてやれることがあるなら。
最後にお前のくれた約束だけは、必ず、何があろうと守ってみせよう。
緋真は、心を、その胸の愛情や優しさを、預けてくれたのだ。
ならばその心の、すべてを預かろう。
お前を責める痛みも、お前の抱える苦しみも、すべて私が預かる。
愛するとはそういう事なのだろうと、白哉は感じていた。
この気持ちを、緋真を想う気持ちを言葉にすることなど出来ない。
だから白哉は、ただ静かにそっと、妻の唇に口付けを落とした。
それは梅の花の、未だつぼみの頃。
彼は、まだ知らない。
遠い春で、誰かが彼を待っている。
―――…彼女によく似た、面差しで。