SD

□ラブレター
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「あのっ!これ読んで下さいっっ!!」


勢いよく差し出したのはシンプルな白い封筒
中身は、何度も内容を練り直し、何時間もかけて何度も書き直したラブレターである。
陰ながら見詰めてきただけだった為、これ以上の告白の仕方が思い浮かばなかったのだ。
少しの会話もしたことがない、というのは致命的かもしれない。
が、サーフィンをしている姿を見ている時、諦めたくないと不意に思った。思って、しまった。
ただ見詰めているだけでは嫌だ、と。


「ん?これは…」
「ラブレターです!!」


波に挑む楽しげな顔も、バスケをする時の飢えたような獣のような眼差しも、廊下で友達と話ている時の穏やかな声も…
全て欲しくて。欲しくて堪らなくて。喧嘩を売るかの如く険しい表情で牧の顔を睨み付ける。
勿論緊張していたからなのだが、残念ながら好意を持っているようには見えなかった。
だから、


「ラブ、レター…?」
「はいっ!私、牧先輩の事が好きなんですっっ!!」


だからこそ瞳を見開いた牧が、なかなか言葉の意味を理解出来なかったのも仕方がない事だといえる。
好意を寄せられた嬉しさよりも困惑が拭えなかったのだから。
自身の表情には気付かず、絶対諦めたくないと意地になっていて。茫然と見返す牧の姿に焦って必死に思考を巡らせる。


「だから結婚して下さいっ!!」
「…は?」


思わず発したプロポーズは、明らかにてんぱっていたせいだった。
更に呆けた表情になった牧を見て。間違った言葉を放ったと直ぐに気付いたが、取り消せるはずはなかった。
弁解しようと口をぱくぱく動かすけれど、何故だかそこから音は出てこない。
苦しくて。恥ずかしくて。もどかしくて。いつの間にか顔だけではなく項や耳朶までも真っ赤に染め上げながら俯いていた。


「…ぇ?」


どれくらい経った頃だろうか?
空気が動いたような、そんな気がした。
最初は風の音かと思っていたが、実は牧の笑い声であり、徐々に、確実に大きくなってゆく。
意味が全く理解出来ずに今度はこちらが茫然と見詰めていると、突然間合いを縮められた。
耳を優しい吐息が擽る。


「取り敢えずお付き合いしてみてから考えてもいい?」


声が小さく震えていたのはまだ笑いがおさまっていないからだろうが、今意識すべき点はそこではなかった。
重要なのは、疑いようもなく告げられた内容で。だけども嫌になるほどじんわりと、ゆっくりとしか脳に染み込んでこない。
その為、゙駄目?゙と柔らかな笑顔を浮かべた牧に確認された時に暫くぼんやりしてしまった。
けれども、なんとか意思表示はしようと壊れた首ふり人形のように幾度となく只管頷き続けたのだった。























(牧。なんか無駄に長くなってしまいましたが、もしかしたら牧sideもアップするかも、ですよー!
ま、その前に続きもの仕上げたいと思いますがね。
相変わらず纏まり悪くてすみません(-.-;))



初出し 2012/06/30 01:06
→牧side
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