SD

□ずるい所
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「紳一はずるい!」
「は?」


潤んだ眼差しで急に訴えかけられた言葉の意味がわからず、牧は大きく瞳を見開いた。
悔しそうな、それでいて何処と無く切なそうな表情を浮かべている彼女にどう対応すれば良いかわからずに口籠もる。
゙ずるい゙と責められるような事はしていないはずだった。
おざなりに相手をしていないし、疎かにしているつもりもないので困惑が拭えない。


「どこが、だ?」


取り敢えずは事実確認をしようと牧は口を開いた。
大切なのだ、とても。
無理だとわかっていても、全く辛い想いをして欲しくないほどに。
だからこそ慎重に彼女の表情を探る。
何一つ見逃さないように。


「悪いが、俺はエスパーじゃないから何がずるいのか言ってくれないとわからない」


静かに問い掛けると、どういうわけか一気に表情が曇った。
思わず手が伸びる。
悲しげな顔を見たくなかったのだ。
細い身体を、まるで思いの丈をぶつけるように強く抱き締める。
何故だか、離してはいけない気がした。


「そういう所が、ずるい…」
「え?」


それが正解だったのか、小さく鼻を啜る音と共に怖ず怖ずと細い手が牧の白シャツを握る。
自身の肩に、まるで預けるかの如く寄せられた頭部から良い香りがして。牧は酷く動揺した。
その為に、身体が一瞬硬直してしまう。


「なんで怒らないの?」
「なんで、って言われても…」
「そうやって直ぐ私を甘やかす」
「…そんなつもりはないんだが……」


不意に発されたのは今にも泣き出しそうな、拗ねた声音
胸が酷く締め付けられて苦しくなったが、なんとか手を動かして優しく髪を梳いた。
柔らかな手触りがとても愛おしい。
何度も丁寧に触れる。


「いっぱい好きにさせて、本当にずるい」


それに誘われたかの如く齎されたのは衝撃的な言葉で。無意識の内に抱きしめる腕に力が入ってしまった。
直ぐに痛さからか小さな悲鳴が上がり、慌てて牧は距離をおく。
けれど、


「ヤッ…!」
「ぇっ、ちょっ?!なんだ?!」
「離しちゃやだ!」


けれど、瞬時に距離は0になった。
細く白い手に引き戻されたからである。
が、強引な事を仕出かしたわりには彼女の耳だけではなく項まで真っ赤に染まっていて。


「離しちゃ、ゃだ…」
「ああ、離さない」


あまりの可愛さに、牧は柔らかく笑んだ。
そして、そのまま自身の宣言通り、今度は離さなくてもすむように細い身体を優しく抱き締めたのだった。

























(牧。何も考えずに作成したら相変わらず意味不明にな感じになりました(>_<)!

ん。色々すみません…)


初出し 2011/06/28 00:53


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