SD
□狂愛
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君をそっと
→腕の中に閉じ込める。
「まっ、牧君?!」
「………………………………」
「どどどーしたの?!」
慌てる君の綺麗な黒髪がサラッと揺れた。
薫りたつシャンプーの香が酷く甘く感じられて。高鳴る鼓動と連動するかの如く、抱き締める手に力がこもってゆく。
「牧君っ?!」
そのせいか、更に慌てた声が響き渡った。
抱き締めている為に表情は見えないが、元来は透けるように白い君の耳が紅く染まっているのが見えて。口元は自然と緩んでゆく。
「ねぇっっ!牧くっ…ヒャァッ!!」
可愛くて。愛しくて。
優しく耳を食めば、上がるのは甘い嬌声
それに誘われたように若干強めに耳朶を吸い上げた。
そのまま首筋まで唇を下ろしてゆき…
「ちょっ!待っ!!」
「待たない」
ゆっくりと鎖骨に舌を這わせる。
拒絶や嫌悪の言葉は聞きたくなくて。わざと小さな口に人差し指と中指を突っ込んだ。
「待ちたくない」
とほぼ同時に温かく柔らかな口内と舌の感触にゾクリッ、と甘い震えが背筋に走る。
更に緩んでゆく口元を誤魔化すように白い肌に噛み付いた。
「…誰にも…誰にも渡さない……」
そこに散ったのは紅い華
それは酷く独占欲を擽り、心に暗い喜びを高ぶらせてゆく。
「…愛してる……」
と、不意に怯えたような潤んだ瞳と目が合って。言い知れぬ興奮が身体を駆け抜けた。
だから…
「愛してるんだ……」
だから、わざとこれが現実だと知らしめるように、瞳から視線を逸す事なく音をたてて小さな鼻にキスを落としたのだった。