SD

□゙好ぎって言って
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・卑怯な罠を
→仕掛けても良いですか?
ほとんど言われたことはないけれど
愛されてるのはちゃんとわかっている。
大切にされてるのもちゃんとわかっている。
だけどたまには『好きだ』とか『愛してる』とか聞きたいの――…



「紳一」
「ん?どうした?」
「バスケ……好き?」
「あ?ああ…」
「駄目駄目っ!好き嫌いで答えてっ!!」
「…ぇ…?」
「好き?嫌い?」
「……好きだが…」
「勿論試合するのも?」
「…好きだ…」
「海は?」
「…好きだ」
「サーフィンは?」
「好きだ」
「私は?」
「好き…だ……あ゙?」
「…クスッ♪引っ掛かった♪」
「っっ〜〜?!」


口を押さえた紳一の耳が、徐々に変色していくのが見えて…
自身の唇がゆっくり緩んでゆくのがわかった。


「あのね?質問された時に3度以上同じ答えを繰り返すとね?その後の質問にも無意識に同じ事言うんだって♪」
「〜〜!…嵌めたな……?」
「うん♪」
「……何してんだよ…」
「むぅ。だって…だって!流されて…でもどうしてでも紳一の口から『好きだ』って聞きたかったんだもの…!」
「……………………………」
「……嵌めてごめんなさい……」
「……フゥ…」


だが、徐々に眉間に深い皺を寄せてゆく紳一の顔をきちんと見れずに目線を逸らした。
気まずい沈黙の中に落ちた溜め息に身体がビクッと跳ね上がる。


「…紳っ「流れで好きだと聞けばそれで良いのか…?」
「えっ…?」


必死に弁解しようとした私は、急に強く抱き締めてから言われた言葉が上手く理解出来なくて…
反応出来ずに固まってしまう。
そんな私の気持ちを知ってか知らずにか……
紳一は再度口を開いた。


「気持ちが籠ってなくても…良いのか?」
「え?」
「俺の心は要らない…?」
「っっ?!要るっ!要るに決ってるっ!!」
「…そうか……なら…良かった……要らないかと…思った……」


話の内容に勢いよく視線を向ければ、紳一はとても優しく穏やかな瞳をしていて……
私は自身の身体が壊れたように熱が上がってゆくのを感じた。


「………好きだよ…誰よりも…愛してる…」
「っっっ!」


そんな私の耳元で躊躇いがちに…だけれどもハッキリと囁かれた紳一の言葉は多大な甘さを含み、私の脳内を溶かしていったのだった。










バトン
初出し 2008/09/29 02:15


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