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□牧さんの幼馴染みシリーズ
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帝王と幼馴染みと野猿と


・笑わないで聞いて
欲しい話があるからと見ず知らずの女生徒に誘われ……
信長は体育館の裏手にいた。


「で、あの……」
「シンちゃんはカイワレを育てるのが好きなの……」
「……は…?」
「だからね?スーパーに売っているカイワレを使用するとスポンジと茎みたいなのが残るでしょ?それを水につけておいて育ててるの」
「……はぁ…?」


もしかしたら告白かもしれないと期待していた信長は意味が全く掴めない話に素頓狂な声をあげる。

何故自身がこんな話をされているのかが信長には全くわからない。

先ず『シンちゃん』とは誰の事なのか……


「それにね?シンちゃんはシジミ汁に小さい幸せを感じているの」
「……………………………」
「他にも…………」


信長の心の葛藤に気付かぬ女生徒は『シンちゃん』とやらの話をし続ける。
意味がわからないが、何と言えば良いのか……
信長は上手く口が挟めず、十分ほど『シンちゃん』に関する情報を聞き続ける。
そんな状況を打破したのは、部活の先輩の声であった。


「……何をしている…?」
「あ、牧さ…「シンちゃんっっ!!」
「っっ?!」
「……清田に何を話した…?」
「え…?シンちゃんの株上昇間違い無しの良い事♪」
「……嘘つけ…」


溜め息まじりに自身の顔を手で覆う牧に信長の口は驚愕に大きく開く。


「『シンちゃん』って…まさか牧さんっ?!」
「そうだよぉ♪紳士な一郎の略を名にもつ牧紳一君どぇぇぇす♪」
「マジですか?!」
「……信じるな…清…「煩いなっ!シンちゃんは黙っててっっ!!」
「……………………………」
「ま…、牧さん……?」
「もうっ!なんでシンちゃんは邪魔するかなぁ……折角『帝王』なんて堅い渾名がついたシンちゃんに柔らかくお莫迦なイメージをつけてあげようとしてるのにっ!!」
「……はぁ?」
「…清田……気にしなくて良い……いつもの事だ……」
「なのに、シンちゃんは私が何かしようとしたらすぐ邪魔してっっ!!」
「………牧さんの彼女……ですか?」
「違う。幼馴染みだ」
「そんなに私が好きなのぉぉっっっ?」
「……フゥ……周囲に迷惑だからいい加減声量下げろ…」
「……もうっ!!シンちゃんたらノリ悪いんだからっっ!!」
「……はいはい…」
「そこっ!『はい』は一回っっ!!」
「………フゥ……はい……」
「良しっ!!」
「……………………………」


二人のやり取りをジッと見つめながら、何故牧がいつも落ち着いて見えるのか……
少し理解出来たような気がした信長であった。






















バトン
初出し 2008/08/21 04:42

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