SD

□スリーポイントと涙
1ページ/1ページ






・あなたに触れた瞬間
→そこに全ての熱が集中したのがわかって慌てて距離をおく。

ドキドキドキドキ!


「サンキュッ!」


転がってきたボールを拾って渡した私に向け、屈託なく笑うあなたに心臓が莫迦みたいに荒れ狂う。

『気にしないで下さい』なんてニッコリ笑って応えられればもっと話が出来たかもしれない――…

なんてすぐコートに戻っていったあなたの背中を見ながら今更考えても仕方ないことが一瞬頭を駆け巡るけれど、スリーポイントを決め、嬉しげに誇らしげにあなたが手をあげるのを見た時に無駄な感情が消えた。


「…綺麗……」


思わず涙が零れ落ちる。


「えっ、ちょっ、ど、どうした?」
「ぇ?」
「俺のせいか?」


そんな私に慌てた顔をしてあなたが駆け寄ってくる。


「ぇ?……え…?」
「さっき何かしたか、俺?別に悪意があったわけではっ!!」
「ちょっ、ちょっと待って下さい…!何のお話しですか…?」
「だって泣いてるから…!」


意味がわからずに慌てる私に彼はズズイと勢い良く間合いを詰めてきた。
恥ずかしくて逃げようとするけれど体育館の壁に突き当たり今以上の逃走は出来そうになく……


「三井先輩の綺麗なフォームに感動したんですっ!!だから涙が……」


仕方なしに迫り来るあなたの顔を見て心臓が止まらぬように、下を向きいつの間にか涙が止まった目を瞑って本音を零す。
自身の身体の熱が物凄い勢いで上がってゆくのを自覚していたがどうすることも出来ず、ただ震える自身の手をしっかり握り締めた。


「…えっと……」
「す、すみませっ……気持ち悪いですよね?私……」


何処か困ったような声に心が冷えてゆく。
無理に笑おうとするけれど、唇がワナワナ震えていう事をきかない……


「違っ!そんな事思ってねぇっ!!」
「ですが…「ダァァッ!泣くなっ!!」


また零れ落ちてしまった涙を若干乱暴に…でも何処か優しく拭ってくれる彼に心臓が嬉しい悲鳴をあげる。

ドキドキドキドキ!
今にも煙をあげてしまいそうだ!


「その…その……な?さっきの言葉嬉しかった。サンキュ……」
「はへ?」
「っっっ!んな顔してこっちを見るなっ!!」
「先…輩……?」


私をそんな状態まで追いやれる頭をガリガリと掻きながら外方を向いたあなたの耳や顔も真っ赤で……


「…クスッ……」
「っ!笑うなっ!!」
「すみません」
「チッ!」


嬉しくて嬉しくて堪らなくて私は、自身の唇が酷く緩んでいくのを止められそうにはなかったのだった。
























バトン
初出し 2008/11/17 23:43


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ