銀魂
□誓=祈
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「止まないな…」
ぼそっ、と呟かれた言葉は暗い空間にかき消された。
夜ではない。
まだ昼だというのに…
暗い空。
太陽光は分厚い雲に隠されて。その姿は未だ見えぬまま。
ただ雨音だけが嫌がらせのように響き渡っている。
「土砂災害起きなきゃいいが……」
まるで狂い出した時を嘲笑うように。響く。響く。響く。
それ、気に入ってるんです
不意に光を求めて伸ばした逞しい手は愛しい少女の髪紐を強く握り締めていた。
「お妙、さん…」
そのままゆっくりと唇を寄せてゆく。
今は貸してあげますが、
後で必ず返しに来て下さい
触れるか触れないか。
見た目にはとても微妙な距離
けれど、
「必ず帰ります」
けれど、その瞳は戦場の中にいるとは思えぬほど穏やかで優しい。
絶対ですよ…?
今、男の脳裏にあるのは、愛しい少女に別れを告げに行った時に見てしまった今にも泣き出しそうな儚い笑顔である。
でなければ近藤さんを大っ嫌いになります
実は、その時に男は固い、固過ぎる決意を抱いていた。
「お妙さんの元へ……」
生存するのが難しいと言われた大勢の血に染まっている戦場から生きて帰ろうと、少女の笑顔をもう一度見に行こうと決めていたのである。
だから、
「生きて、生きて帰ります」
だから、雨の為に小休止状態になっている戦場で男は再度強く激しい想いを込めて髪紐に口付け、瞳を閉じた。
ゆっくりと息を吐き出す。
そして…
「貴女の為に――…」
そして、再び開かれた瞳は険しく鋭くて。油断なく戦場を見つめていた。
(近。前に書いたバトンネタ続編(←前ページに移動済)。で、定番の雨だから雨ネタです。
うひゃひゃ!相変わらず意味不明です(笑))
初出し 2010-02-02 02:57
改訂 2012-09-04