銀魂

□誕
1ページ/1ページ






「なんで来ないのよっ!」


十月にしては穏やかで暖かな風が樹々を揺らしながら吹き抜けてゆく。
夕闇が近付く大空を睨むように見つめつつ拳を握り締め、妙はギュッと強く唇を噛み締めた。
けれど、


「って!まるで私が来て欲しいって思ってるみたいじゃないっっ!!」


けれど、直ぐに嫌な思考を振り払うかの如く、頭を乱雑に激しく左右に振る。
つられて柔らかな髪が揺れた。


「どうかしたんですか?お妙さん」
「糞ゴリラッ?!」


暫くして疲れて首振りを止めるや否や、聞こえてきたのは優しい声音
落ち着いた息をする間もなく、妙は華奢な肩を跳ね上がらせる。


「なっ、なんでっ?!」
「はい?」
「なんで今更来るのっっ?!」


不自然に近藤から瞳を逸らして。照れを隠すように勢いよく言葉を紡いだ。
身体が熱くなってゆくのを冷ます為に軽く顔をはたく。


「あ〜…、それは……」
「……それは…?」
「え〜と…」
「何なのよっっ!!」


とほぼ同時に齎されたしどろもどろな言葉に苛立ちが募り、つい妙は語調を荒げた。
そんな彼女に近藤は苦笑を浮かべていて。


「今日お妙さん誕生日ですよね?おめでとうございます」
「あら、知ってたの?いつも用もなく来てるのに今日は来ないから知らないのかと思ってたわ♪」
「いえいえ!知ってましたよ?知ってはいたんですが……」


妙の柳眉が跳ね上がる。無意識のうちに口元が歪んでいた。


「ですが…、何……?」
「誕生日プレゼントに何を贈れば良いかわからなくて」
「だから来なかった…って事?」
「違いますよ。わからなかったから周囲の人に聞きまくったら、゙今日一日近付かない事が一番のプレゼンドと複数回答をもらったので仕方なく我慢してました」
「………ぇ…?」
「そう。我慢してたんですけど堪えきれなくて……結局来ちゃいました!!」


と、不意に近藤から発せられた言葉が理解できなくて。ぽかんと妙の唇が意味なく開く。
しかし、相変わらず近藤は笑ったままで。自身の頬を軽く掻いていた。


「あはは!本当にお妙さんが好き過ぎて困っちゃいますよ!!」


どこか遠くで近藤の声が響いている気が、妙はしていた。
しかし、急に間合いを詰められて。


「知りません…!そんな事!!」


いつも通りの右ストレートが近藤の巨体を吹っ飛ばす。
毎度のお馴染み。華麗に宙を舞って地面に叩き付けられる。
その一部始終を見守る事なく妙が踵を返すのもいつもの事で。


「ゴリラはゴリラらしく妙な事考えないでいつも通りふざけた顔でうろうろしてなさいよ!」


だが、その耳は明らかに夕陽のせいではなく紅いのだった。




お妙さん!
お誕生日おめでとうございます♪



































(近妙。遅れましたがお妙さん誕生日話です!!
うひゃひゃ♪もう駄目駄目で〜す!)



初出し 2009-11-02 03:22
改訂  2012-09-01

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ